1月7日

2003-01-07 mardi

いよいよ仕事が始まったけれど、二週間授業して、定期試験で、あとは春休みである。やっほー。
夏休み冬休みは世間でもお休みの方が多くいるが、春休みというのは「子ども」と「先生」だけの特権である。
世間さまが仕事をしているときに(とくに氷雨の降る朝など)温かいふとんにくるまってふにゃーっと朝寝ができるというのは人間として至福のことである。
そういうときは心の底から「ああ、大学の教師になれてよかった・・・」と思うのである。
だって、そうでしょう。
多くの人が金や名誉や地位を求めるのは、つきつめれば「いつか誰にも文句をいわれずふにゃーっと朝寝ができる身分になりたい」からである。
私には金も名誉も爵位も領地もないが、すでにして「好き放題朝寝ができる身分」である。これをして「王侯貴族の暮らし」と言わずになんと言いましょう。

もちろん、朝寝などしようと思えば、誰にだってできる。
「誰にも文句を言われず」という条件をクリアーするのがなかなかたいへんなのである。

私には世話をすべき妻も子も犬も猫もハムスターもいない。水やりをする観葉植物も牛乳を足すヨーグルトもない。遊びに誘う悪友も、デートに誘ってくれる悪女もいない。胃を痛めている編集者は何人かいるが、それは私の胃ではない。ときどき弟子たちが「せんせー、あそぼー」と誘いに来るが、こちらが大口あけて朝寝している時間にはむこうも大口あけて朝寝しているから朝寝の邪魔には来るはずもないのである。

もちろん、このような非生産的な社会的身分がこのご時世に許されるはずはない。
いずれ人文系大学教師というようなものは非人情な市場によって淘汰され、この世からかき消えるであろう。そのとき、私のこの日記は「21世紀初頭の人文系大学教員の生態-絶滅へのカウントダウン」などと題されて末永く人々に語り継がれてゆくのであろう。

さて、午前11時20分までたっぷり朝寝もしたし、ぼちぼち仕事でもすっか。