12月15日

2002-12-15 dimanche

久しぶりの多田塾研修会で新宿抜弁天の本部道場へ。
多田先生はじめ山田師範、坪井師範、今崎先輩のお歴々に多田塾合宿以来のご挨拶を申し上げる。ということは、私はこの日の参加者の中では、入門年次上から四番目の「長老」なのである。
まったくこんなに長く合気道をやることになるとは思わなかったですね、と帰り道ごいっしょした今崎先輩と話し合う。
背中の筋肉痛が抜けきらないので、今日も体術はパスのつもりであったが、幸いにというべきか、体術は最後の20分だけであと3時間余はフルに稽古に参加できた。
多田先生のお話することばが一言一言身にしみる。
昔は、自分とはあんまり関係ないレベルのむずかしい話だろうと思って聞いていたが、さすがに28年目になると、しみじみ身にしみることばかりである。
もちろんもっと早くから先生の教えの意味が分かっていた人もいるのだろうが、私程度の武道センスではこれくらいの歳月が必要だったのである。
とくにこの1年の、甲野先生との出会いを通じて、ずいぶんと合気道についての理解が深まった。
多田先生は中村天風先生の教えをつうじて大先生のことばの意味が分かったことが多いということを何度か話されていたが、少し離れたところに確固とした参照項があると、「本筋のこと」についての理解は進むものである。
28年稽古してきて、いまさらながら稽古のたびに発見がある、ということがほんとうにありがたい。
膝もぼろぼろ、腰もがたがたという文字通り「足腰立たない」爺になってしまったころになって、武道の術理がだんだん見えてくるというのはアイロニーではなく、たぶんこれが凡人の修業の本筋なのであろう。馬齢を重ねるというのも、なかなか棄てたものではない。

久しぶりに稽古でたっぷり汗をかいて、速攻で新宿プリンスホテルに投宿。
今夜の「バトルロワイヤル宴会」の会場は新宿百人町の韓国料理。7時からなので、まだ小一時間ある。お風呂にはいって汗を流し、エアーサロンパスを背中に大量噴射して、バトル会場へ。
新宿のこのあたりは私が大学生のころとはずいぶん様変わりしてしまった。
まさに国際都市「不夜城」である。
会場が分からなくてうろうろしていたら、かつかつと下駄音も高らかに闊歩する音がきこえる。案の定、甲野善紀先生とその「期間限定美人秘書」大出真里子さん。
期間限定であろうと地域限定であろうと、「美人秘書」とはうらやましい限りである。
いいなあとぼおっと見ていたら、「何言ってるんですか、ウチダ先生には学生さんたちがいるじゃないですか」と甲野先生はおっしゃる。でも先生、うちの学生さんたちは私に用事を頼むことについてはやぶさかではないが、私の用事を減らす方向にはそれほど関心がおありにならないのですよ。
会場に三人で先着。そこに晶文社の編集の足立恵美さんとライターであり松聲館の門人でもある田中聡さんが到着。
田中さんは甲野先生の本を来月晶文社から出すのである。足立さんはその担当者。私はどちらも初対面であるので早速名刺を交換。
稽古後でお風呂にまではいってしまったので全身が「ビール!」状態なので、ランディさんと安藤さんを待たずにとりあえず生中で乾杯。
ビールが全身の細胞にしみじみと染みわたり、舌がなめらかになる頃に、田口ランディさんと晶文社の安藤聡さんが登場。
いよいよバトルロワイヤル宴会の始まり。
ランディさんは想像通りのキュートでスマートな女性である。
「ぼく、ランディさんのファンなんです。本、読んでます」といきなりミーハーモードで宴会が始まる。
そもそも甲野先生とのご縁は、甲野先生がご自分とランディさんの両方について言及しているサイトを検索したら、私のホームページがヒットしたというところから始まったわけであるからして、私がこのお二人のファンである、というのが今夜の宴会のもともとのきっかけなのである。
「個人的アイドル二人」と同席して晶文社のおごりで酒池肉林というわけなのだから、ウチダ的には「夢ではないか」状態である。
すっかり興奮して、3時間、わいわいとしゃべりまくり、爆笑のうちに宴会は果てる。
調子にのってずいぶんとお二人には失礼なことを申し上げてしまったような気がするけれども、どうかご海容願いたい。
実に愉しい一夕であった。
セッティングしてくださった晶文社のお二人の編集者と、多忙な中おつきあい下さった甲野善紀先生、田口ランディさん、そして、私の危険なジョークに受けまくってくださった田中聡さんに心からお礼申し上げたい。
甲野先生とは来月の12日NHKのラジオ深夜便で対談相手としてごいっしょさせて頂くことになっているので、またお会いできる。
80分生放送しゃべりっぱなし、という無謀な企画である。どんな展開になるか見当もつかない。聴取者はともかく、話している二人だけは大いに楽しめそうである。
一日のうちに、多田先生と甲野先生と田口ランディさんに会うという、実にヘビーにしてディープな一日ではありました。