12月6日

2002-12-06 vendredi

うー。具合が悪い。
数日前から鼻づまりであったが、ついに発熱。
休講にしようとかとも思ったが、1限、2限とゼミが続く。1限に休講にされると、遠路眠い目をこすりながら登校してきた学生諸君は「な、なんだよお」と呆然自失してしまうのである。それも気の毒であるので、熱をおして登校。二コマ片づけて、もう一つ昼の会議も出る。しかし次の教授会まであと2時間。だんだん熱が上がってくる。
上野学科長に「すいません。熱出たので、帰ります」と告げて、いたわりの声を背に一路帰宅。
パブロンを呑んでベッドに潜り、ルーディネスコの『ジャック・ラカン伝』を読んでいるうちに爆睡。
しかし1時間ほどでチャイムに起こされる。のろのろ起き上がってインターフォンまでたどりつくと、もう切れていた。
起こすなよー。
ふたたび『ラカン伝』を読む。
しかし、ラカンというのも色々と人格的に問題の多い人ではあるようだ。(弟子にこれだけ書かれちゃうというのが問題だよな)
お腹が空いてきたので、のろのろ起き出して「マルちゃんのたぬきうどん」を食べる。
明日は福岡で「レヴィナスとラカン」についてしゃべらないといけないのだが、まだ全然、話す内容がまとまらない。
どうして、私はこういうふうにいきあたりばったりの人生を送っているのであろうか。

昨日の夜は酔っぱらっているところにAERAの編集部から電話取材があって、「ちかごろの大学生の受講態度の悪さについて、大学の先生からコメントを」というお問い合わせ。
私の授業の受講生たちはどのクラスも私語もなくきらきらと目を光らせて静かに私の話を聞いているが、そんな答えではまるで記事にならないので、大学教育のカバリッジが「中等教育と高等教育」の二つの領域にわたってきたという事実について、所見を述べる。
今日の昼間は本学の非常勤の先生から、学生にどうやって上手なプレゼンテーションをさせたらよいのかについてアドバイスを求められる。
別にコツがあるわけではないし、だいたい私のゼミの諸君が「上手なプレゼンテーション」をしているのかどうか私にはよく分からない。(私には面白いから、それでいいんだけど)
ただ、質問をするときに「答えを知っていて、学生が正解するかどうか確かめるために質問する」場合と、「答えを学生に教えて欲しくて質問する」場合では、学生に対する敬意のあり方が違うだろう。
学生がその潜在能力を発揮する機会を最大化するのは、叱責や論破ではなく、教師が敬意をもってその所見に耳を傾けることであると私は思っている。意見の違う人もいるだろうが、私は経験的にそう信じている。というようなことをいきあたりばったりにしゃべる。

家にもどるとファックスや手紙がいっぱい来ている。
見ると、いろいろな原稿の校正のようである。いったい、いつこんな原稿を書いたのか覚えていないが、とりあえず校正する。
机の横には次に書かなければならない締め切り間際の原稿依頼の手紙やファックスが積み上げられている。
一体、いつ書くんだろう、こんなに、と思いつつ、熱が出てきたので、また寝る。
寝ているあいだに「こびとさん」がばりばりと原稿を書いてくれるとありがたいのだが。