11月27日

2002-11-27 mercredi

終日原稿書き。
『ミーツ』の原稿が遅れている。
「いつもニコニコ守る締め切り」のウチダであるが、さすがに物理的に書く「時間」がないと原稿は書けないものである。
ふだん、原稿は一気に書いてしまう。でもすぐには送らないで、しばらく寝かせておく。
寝かせておいて、すこし頭をクールダウンしてから読み返すと、「よけいなこと」や「書き足りないこと」が見えてくるので、それを書き直して原稿を送る。
今回も原稿は締め切り前に書き上げたのだが、ぎりぎりだったので、寝かせる時間をいつもどおりにとったら、締め切りに間に合わなかった。
しかし、寝かさないで原稿を送ってしまうと、仕事が荒れてくる。(『女は何を欲望するか?』は寝かせる時間が短すぎたので、いま読み返すとアラが目立つ)
いまある原稿の中でいちばん寝かせている時間がながいのは晶文社の『映画の構造分析』である。これはもう1年以上寝かして、ときどき取り出しては書き足しているので、だんだん「いい味」に仕上がってきた。「藪そば」のたれみたいなものである。もうぼちぼち出荷してもよい時分である。
角川の幸福論(昨日いきなり題名を思いついた。『疲れすぎて眠れぬ夜のために』For a hard day's sleepless night)もだいぶ書き進んだので、夜明けは近いのだが、これもそのまま出荷するわけにはゆかない。しばらく寝かせる時間が必要だ。
PHPの「今月の原稿」も先方で設定した締め切りが来ているはずなのだが、まだ何も書いてない。
そこにまたどんどこ仕事が入る。
インタビューとか短いエッセイとか、ひとつひとつは簡単な仕事なのだが、それが毎日のようにあると、「塵も積もれば」で、ほんらいの仕事のための時間が取れない。
卒論や修論の指導にはっぱをかけないといけない時期なのだが、そちらにもまったく手が回らない。ウチダは悪い先生である。ごめんね、みんな。
年末期間限定にしておいて、ほんとうによかった。あのままオッファーされた連載仕事を次々引き受けていたら、もうとっくに破綻していたであろう。
あと一ヶ月、なんとか生きて2003年を迎えたい。
それにしても、この先私はいったい何冊本を書かなければいけないのか。
忘れそうなので、書き出しておこう。

(1)レヴィナス『困難な自由』全面改訳(あと250頁)来年中にはなんとかします中根さん・・・
(2)晶文社、『映画の構造分析』(ようやく完成)
(3)新曜社『身体論』(ありものコンピレーションなのであと50枚くらい書き足せばできあがり)
(4)角川書店『幸福論』(口述筆記にあと100枚書き足し)
(5)PHP新書(往復書簡形式で進行中、あと200枚くらい)
(6)洋泉社、(ホームページありものコンピレーション)あと100枚書き下ろし
(7)講談社メチエ『道徳論』(まだ一枚も書いてない)
(8)文春新書『寝ながら学べるレヴィナス』(これはあれこれありものが少しは使えそう)
(9)文藝春秋『おじさんの系譜学』(まだ一枚も書いてない)
(10)新潮新書、書き下ろし(もちろんまだ一枚も・・・)
(11)冬弓舎、『邪悪なものの鎮め方』(もう一度鼎談しないと)
(12)『寝ながら学べる浄土真宗』(ホームページでそろそろ連載開始しないと)
(13)ちくま新書、(企画未定)
(14)角川書店『性愛論』
(15)晶文社『おじさん的思考パート3』

あと15冊か・・・(どこかの出版社の企画を失念していなければ、だけれど)
(1)から(6)までと(11)(15)は来年のうちに出せそうである。(これで8冊)
残り7冊はいったい書き上がるまでに何年を要するのであろうか。
1年2冊ペースでも、3年半かかる。もちろんそんな調子よくゆくはずない。
リストからすべての仕事が消えるまで、あと5,6年はかかる勘定だ。
2009年・・・果たして、私は生きているであろうか。