11月17日

2002-11-17 dimanche

今週はわりと規則的な一週間だった。授業も稽古も予定通りやったし、ちゃんと週末は「お休み」になった。

鍼で腰を見て貰う。
すごく「凝っている」という。ちょうど肩がばりばりに凝るように、右腰の内側の奥の方の筋肉がばりばりに凝っているのである。
使わなければ治りますというはごもっともであるが、どうしてこんなところが凝るのか分からないような部位であるので、当然ながら、どうやったら「使わないですむ」のかも分からない。
とりあえず、「歩かない、立たない、起き上がらない、背中をまげない」ということをすればよいらしい。(つまり背中をすっと伸ばした状態で、ごろごろ寝ていればよいのである。たいへん楽そうでウチダ的には大歓迎なのだが、その上でどうやって社会人として生きてゆけばよいのであろう)

家に戻って、「レヴィナスとラカン」の原稿をばりばり書く。
レヴィナスのテクスト・パフォーマンスのねらいは「呪鎮」である、という白川静先生にインスパイアされたアイディアが浮かび、フロイトの呪詛論をどんどん読む。
おお、こ、これは面白い。
しかし、白川静に影響されて、フロイトの「喪」の概念を使って、レヴィナスの「他者」を読み込み、それをラカンの〈現実界〉に結びつけるというようなデタラメな読み方をする研究者はなかなかいないであろう。(いたらお友だちになれそうだが)

夕方まで原稿を書き、街へ出る。
今日は文春のT中さんが神戸に来る。とりあえず仕事の話ではないのでだいぶ気楽である。
「グリルみやこ」で神戸牛カツレツとビール。そのあとハンター坂を上がって、ジャック・メイヨールへ。もう国分さん、小林さん(これまで「株屋の美女」と通称されておりましたが、今回本名を伺いました)、野村さんなど「街レヴィ派」のみなさんが、著書を持ってカウンターでスタンバイしておられるので、「まいどおーきに」とお礼をしつつ、さらさらとサインとネコマンガを書く。
橘さんと国分さんは昨日の合気道のお稽古でさすがに腰や太股の筋肉がばりばりになってしまって、今日は仕事がたいへんだったそうである。
入門するなり即日稽古の通常プログラムに放り込んだのであるから、考えて見れば過酷なしうちであった。
しかし、ふたりとも武道経験者で、基礎的な身体の出来がしっかりしているので、筋肉痛くらいで済むからよいのである。
エアサロンパスとバンテリンがよく効きますよ、という話をしているところに『ミーツ』の江さんが、学生スタッフ(『子どもミーツ』という特集号の編集スタッフたち)八人を引き連れて登場。編集の青山さんも途中から参加して、たちまちジャックの店内は、「街レヴィ派総決起集会」状態となる。
総決起集会なので、江さんもT中さんウチダが順番に学生諸君を相手にばんばん説教をかまし、檄を飛ばす。これで最後に「インターナショナル」を唱和すれば、もう60年代の学生集会に党派の中央委員が「空気を入れに来た」のと見まごうばかりの風景である。
しかし、ジャックもほんとうに変わった店である。(黙ってカウンターに座っていると、橘さんが「せんせ、これちょっと呑んでみて下さい」とワインや日本酒のデギュスタシオンをさせてくれる。「おお、こ、これはうまい」というともう一杯注いでくれる)
数時間にわたって大騒ぎ。
T中さんに「ウチダさんはここに毎晩いらしてるんですか」と訊ねられる。
まさかね。私にそれほどの体力はありません。街へ出るのは、月一です。
日曜はそのひさしぶりの休日でした。ああ、楽しかった。
次は12月22日に、鈴木晶先生がジャックに登場の予定です。
街レヴィ派のみなさん、そのときまた会いましょう。