困ったことになった。
上野千鶴子さんからお葉書を頂いたのである。
お葉書を頂くのはこれが二度目。
先回は『ためらいの倫理学』の読後感として「フェミニズムごときを相手にするのは時間のムダですから、もっとその知能を善用するように」というちょっとシニカルな評がしたためてあった。
あの本では『男性学』をかなりきびしく批評したから怒っているかと思ったけれど、余裕をかましていたので、おお、ウエノチヅコはやはり大物だ。一筋縄ではゆかないな。月のない晩は外出を控えよう、と心したのであった。
それから一年余。また来てしまった。
先週書いた朝日新聞の e-メール時評が気に入られたらしく、「誰も言わなかったこと(誰も言えなかったこと)をよくぞ言って下さいました。こういう目配りは貴重です。」
そんなこと言われても・・・困ったなあ。
さらに、「ご高著『寝ながら学べる構造主義』も拝読。決して易しくはありませんが、『あ、そうだったのか』と膝を打つことが多く、これはこれで内田流構造主義だと得心」
そ、そうかなあ。
あ、にやついている場合じゃないんだ。
なにしろこのあとばたばたと出る『期間限定の思想』と『女は何を欲望するか?』はどちらも上野千鶴子の悪口満載なのである。
こちらが悪口満載の本を準備しているときに、こういう葉書をもらうと立場がない。
私の書き物をちゃんと読んで評価してくれている人に向かって、悪口雑言の限りを尽くすとは、なんと極悪非道鬼畜のふるまいであろう。
上野さん、ごめん。
本読まないでね。
安藤さん、大庭さん、間違っても上野千鶴子に献本なんかしないでくださいね。読んだ彼女が激怒して「あの、恩知らずの腐れ外道が!」とあちこちの書評で「史上最悪の駄本」というような悪口をばんばん書いてくれたら、最高のパブリシティになって、これは売れるぞお、というような邪悪な算盤ははじいちゃダメですよ。ほんとに。
このあいだはA藤Y子さんに同じことしちゃったし・・・
あれも悪いことしたよなあ。
もう物故者と外国人以外、ひとの悪口書くのやめようかな。
と、ちょっと弱気な今日のウチダでした。
(2002-10-15 00:00)