卒論中間発表会。
ひさしぶりにゼミ生たちが集まる。
午後1時から6時前まで11名のゼミ生たちの卒論の概要を拝聴する。
みんな実に面白いテーマで研究をしている。
私の専門分野に少しでもひっかかるテーマを選ぶゼミ生がみごとに「一人もいない」というのがいかにも内田ゼミらしい。
個人的にちょっとどきどきしたのは「インディアン」、「萌え」、「遊女」。
「インディアン」はそのうち論文を書こうかなとひそかに思っていたテーマ。
「遊女」は網野善彦さんを読んでから、「やっぱりオレは売春という制度の本質についてぜんぜん分かってないな」と反省していたテーマ。
「萌え」とか「やおい」とかいうのはなんでこんなものに人だかりがするのか、いまだに理解が届かず、知らないことにも一家言あるウチダにして手も足もでないテーマ。
さすがわがゼミ生たち、ウチダの「弱いところ」をぐりぐりと衝いてくる。本人たちにはそんな意識はないのかも知れないけれど、やはり無意識のどこかに、「『それは、さ。こういうことなんだよ。キミたちは若いから知らんだろうけどさ、ふふふ』というようなしたり顔をウチダ先生にはさせたくない」という気分があるのであろう。
まことに頼もしくもしたたかなゼミ生たちである。
そのあと御影のわが家にて、打ち上げ宴会。
準備の時間がなかったので、フライドチキンと焼きそばとお好み焼きという「ジャンク」宴会である。
お酒だけは潤沢にある。
パリにいる「とほほ留学生」の増本さんから途中で電話がつながり、全員で順番におしゃべりをする。
増本さんから今日の宴会のためにわざわざフランスからアルマニャックを送っていただいた。みんなでありがたくご賞味する。
聞けばゼミ生たちの何人かがすでに「ジャック・メイヨール」にこっそりおじゃましているらしい。
「ウチダゼミのゼミ生でーす」と言えば、タチバナさんはワインの一杯くらいサービスしてくれたかもしれない。惜しいことをしたね。
さる週刊誌から連載コラムの依頼が来る。
「新聞雑誌にはもう書きません」と言うと、なぜか立て続けに注文が来る。
不思議なものである。
泣く泣くお断りを入れる。
しかたがない。
毎日のようにいろいろと書いているが、私の「期間限定」の、考えてみたら最大の理由は「本業が忙しい」からであった。
私はサラリーマンである。
月々のお手当を神戸女学院大学から頂いている。
神戸女学院大学は、教員公募を三十数回落ち続けたウチダを拾ってくれた大恩ある大学である。
その大学がいろいろ大変で、そこでウチダもいつのまにかいろいろと責任をとらねばならぬ立場となった。
すべての教員がもてるリソースをできる限り大学のために傾注することを私は職務上要請する立場にある。
その私が締め切りのある原稿を毎月毎週かかえて、「次のネタ」を考えてぼうっとしていたのでは示しがつかない。本業が忙しいときには、時給がいいからといってバイトに精出すわけにはゆかないではありませんか。
私はやはりサラリーマンとして、サラリーマンの「本道」を歩みたいと思うのである。(というふうにウチダは「根っから」のおじさんなのである)
(2002-10-07 00:00)