9月16日

2002-09-16 lundi

三日間にわたる神鍋高原での合気道部合宿が無事終了。
今回は、「畳止めラバーおよび部旗紛失事件」から始まり、ウチダの「中国道ガス欠JAF呼び事件」と続き、さらに現地入りしたのち「武産合気掛け軸持ってくるの忘れた事件」とあきらかに不注意による小事件が連発したため、「これは凶事の前兆かも」と不安が胸をよぎる。
「こういうときはけが人が出る可能性があるから、いつも以上に細心の注意を払って稽古するようにね」と最初に念押ししてスタート。さいわい、三日の日程は、けが人も病人も貴重品の紛失もなく、無事に終わった。(名色高原ホテルの飼い犬が右足骨折という気の毒な事故があったが、あれは私たちの「凶運」がわんちゃんに転嫁されたのではないかと胸を痛めるウチダである)
東京からゴンちゃん、タカスさんが駆けつけてくれ、ユリさん@横浜もブザンソンから来日中のお友だちエリーズさんと共に合流。ピーちゃん@気錬会OB、石井さん@月窓寺OB、原君@大阪教育大ら「ゲスト男子組」も充実。例年通りのにぎやかな合宿となった。
宴会の話題の中心は当然ながら「かなぴょん婚約事件」であるが、これについてはあまりよけいなことをホームページ上でコメントしてはならないという関係筋からのお達しがあるので、自粛させていただききます。(なにはともあれ、おめでとう)
ウチダは右膝の痛みはだいぶおさまったものの、膝をかばって動いたせいで右腰から右背中にかけての筋肉痛がひどく、また学生OG諸君も相当数が準備不足のまま合宿に突入したため、ホテルの全室における大気成分比率中にエアーサロンパスからの放出ガスが5%ほどを占め、もし引火性があれば、ホテル爆発のおそれもあるほどにメントールが充満していた。
昇級審査は森川直さん一名。無事に5級審査に合格、晴れて「ザ・ハカマーズ」入りを果たした。(ぱちぱち)

今回の合宿の技術課題は「肩を消し、胸を落とす」、「体を割る」、「支点を消す」、「ピンポイント気発動」などこのところのウチダの研究テーマ。これらの技法には昨年末以来の甲野善紀先生との出会いによって気づいたところが多い。(というか全部そうだ)おかげで、多田先生のおっしゃっていた「打ち込み」ということの意味も少し分かってきたような気がする。
術理がだんだん分かってくるにつれて、当の本人の足腰が立たなくなるというのも切ないものではあるが、まあ世の中とはえてしてそういうものである。あとは「口だけ合気道」の方法論的純化に邁進する他ない。
「いけのや」におけるめにうの点検、「うさ餅」購入、「黒豆ソフト」賞味など、ルーティンも無事にこなした「いつもと同じ合気道合宿」であった。
それにしてもどうして私は「いつもと同じこと」をするのがこんなに好きなのであろうか。
向上心とか冒険心というものが構造的に欠如しているのかも知れない。
へろへろになって帰宅して、とりあえずヒルネ。

たまったファックスとメールチェックをしたら、「紀伊国屋Book Web8月月刊ベストセラー」の第一位に『寝ながら・・・』がチャートインしていたという母親からの連絡があった。さっそく新聞を拡げてみたら、おおほんとうである。
二位がいしいひさいちの『現代思想の遭難者たち』、三位が柄谷行人『日本精神分析』。その他、中沢新一、養老孟司、福田和也など錚々たるみなさまを抑えての快挙である。
たしかに『寝ながら・・・』は私の書いたもののなかでは読みやすい本ではあるけれど、元ネタは一週間くらいでほいほいと書いた神戸市の市民講座の一回分の講義ノートである。編集の嶋津さんのきびしい注文でずいぶん書き足したり書き換えたりしたので、仕上がりはずいぶんきちんとしたけれど、内容的にはいつも学生さん相手にでれでれしゃべってることのまんまである。
こんなことでよいのであろうか。
こういうことで「ウチダ最近本が売れたとかで態度でかくなったな、一度ガツンとお灸すえてやらんとまずいんでないの」的なご教導ご叱正が同時多発的に訪れることになったらいったいどうすればよいのであろうか。
みなさん、ウチダはもともと態度の悪い男なのです。昨日今日のことではないのです。だからどうぞご勘弁、という言い訳が通るはずないし。
ああ、困った。