9月8日

2002-09-08 dimanche

『期間限定の思想』の初校が上がってくる。晶文社の安藤さんは仕事が早い。
ゲラを読むと我ながら面白い。「おお、それでどうなるのだ」と書いた本人もどきどきしながら頁をめくり、たちまち二回通読してしまった。何が書いてあるかを熟知している書いた本人が読んでもこれだけ面白いのだから、何が書いてあるか知らない余人にとっては興趣はいかほどであろう。

PHP出版の若い編集者がやってくる。
またまた新書の企画である。持ち込んでくるテーマはみなさんよく似ている。

この世の中はいったいこのあとどうなってしまうんですか?
私たちはこれからどういうふうに生きていったらよいのでしょう?

というご下問である。
若い編集者がそれだけ同じことを訊きたがるということは、たぶん、そういう問いに対する納得のゆく答えがなかなか見出せないということなのだろう。
それを私のところに訊きに来るというのが不思議である。
もちろん口から出任せでよろしいのであれば、いくらでもお答えしてさしあげる。
ほんとうに、そんなのでいいの?と訊くのだが、どうも「そんなんでいい」らしい。
よほど現代日本には「現代日本について納得のゆくこと」を語る人が少ないということなのであろうか。
評論家はそれこそ掃いて捨てるほどいるのに、メディアに流布している言説がみんな似たり寄ったりであることに、若い人たちは、あるいはいらだっているのかも知れない。