8月6日

2002-08-06 mardi

あ、もう8月が6日も経ってしまった。この間に原稿は600字しか書いていない。
これはまずい。
しかし、今日は身体の芯が二日酔いで、仕事をする気分ではない。

5日は大学に行って雑用を片づけ、ついでにVistasの「うちの大学にはこんな教師がいまっせ」コラム用インタビューを受け、猛暑の体育館で杖の稽古。
稽古を一時間で切り上げて、汗でずぶぬれで帰宅。
汗を流してから三宮へ出撃。
駅前のバー・ローハイドでパスティスを飲みつつ江弘毅さんと増田聡くんの登場を待つ。
そのまま三人で上海料理「R」で夕食。
これがものすごく旨くて安い。
まだ上海から日本に来たばかりのシェフの店だそうで、価格設定や店構えにおいて「中国が抜けていない」のである。
豆腐とピータン、塩卵、スペアリブの唐揚げ、冬瓜のスープ、セロリと百合根の炒め物(これが絶品)、上海風炒飯、それとビール。腹一杯で一人3500円。(『ミーツ』の奢りでした。ご馳走様!)
この店はオススメだけれど、お客が増えると混むし、店の方も「なんだ、いくらでも客が来るじゃないか。じゃ、ちょっと値上げしても平気かな、料理も手抜きしちゃおかな・・・」というふうになるといやだから、教えて上げないのだ。(知りたい人はウチダ宛に個人的にお尋ね下さい)
満腹してジャック・メイヨールへ雪崩れ込む。
増田くんの結婚を祝ってまずシャンペンで乾杯。
増田くんの『ミーツ』連載のビジネストークはエディターとライターのあいだで構想にいささかずれがあるらしく、音楽批評のディスクールをめぐってむずかしい問答が続いていた。
そうこうしているうちにジャック常連の街レヴィ派の人々がどんどんやって来る。
みなさんが持ちよる『寝な構』や『おじ的』に次々サインをしてネコマンガを描く。
ジャックには私のことを知っている人が多い。
にこにこ挨拶されるのであるが、こちらはつねに泥酔した状態でカウンターにいるので、どなたがどなたであるかの記憶が定かでない。
潜水艦乗り、株屋の美女、摂津本山のラーメン屋さん(このあいだ食べに行ったら、デザートをおごってくれた。ごちそうさまでした)、ステーキハウスの国分さんなど、すでに二度以上会っているのでお顔は存じ上げているのだが、どの方が誰だったかが判然としないので、何となくあいまいな笑顔をもって応じる。
午前二時まで大騒ぎしてタクシーで帰宅。
増田くんとさらにワインを飲みながら午前四時までおしゃべり。

さすがに今日は頭がぼんやりしている。
起きるとファックスから紙がどよーんと垂れ下がっている。手に取ると文春の嶋津さんと晶文社の安藤さんから。
嶋津さんのファックスは毎日新聞の『寝ながら学べる構造主義』の書評。
渡辺保さんという方が書いているのだが、これが「前代未聞の入門書」という絶賛書評。「感動的な、ほとんど美しいといってもいい文章」という評語にはウチダもびっくり。
嶋津さんによると、この書評が一昨日出てから書店からの買い注文が入って一気に増刷決定となったそうである。
安藤さんからのファックスは『ヘラルドトリュビューン/朝日』の『おじさん的思考』の書評。
書評の題名は Speaking up for dirty old men「オジサン擁護論」。
書名の翻訳は Ojisan-esque thinking となっていた。
「オジサネスク」か。なるほど。
ところどころ本文からの引用があるが、自分が書いた文章を英語で読むのは不思議な気分のものである。