7月7日

2002-07-07 dimanche

あ、今日は七夕だったのか。

午前9時に起床。香川の守さんから頂いたうどんをずるずる食べ、深く満足して新聞を読み、こみあげる眠気に耐えきれず「二度寝」。
11時に従兄のツグチャンから電話。従兄の長女のアカリちゃんは北大歯学部の一年生であるのだが、フランス語がむずかしくて困っていて、何かよい独習書を教えて欲しいというご依頼。
さっそく札幌のアカリちゃんと「子ども電話相談室」状態に入る。
神戸にいたアカリちゃんのご一家とは私たち父子が芦屋に来た90年代のはじめには、よくいっしょに遊んだ。るんちゃんとアカリちゃんは一つ違いだったので、仲良しだった。
そのアカリちゃんがいつのまにやらもう大学生である。
困ったことがあったら、何でも聞いておくれ。フランス語の宿題とか分からないところがあったら、メールで送ってね、やってあげるから。とひさしぶりに「おじさん」顔をする。(従兄の娘だから、正式には親族名称がないのだけれど、何となく「姪」のような気分がする)
親戚の若い子と話をすると、なんとなく「ほっこり」した気分になる。

そのまま一仕事。
腹が減ってきたので「さっぽろ一番味噌ラーメン」を食してから腹ごなしにコーエン兄弟の Oh brother, where are thou? を見る。
原作ホメロス『オデュッセイア』という極上のお笑いロードムーヴィである。
これがセイレンで、これがサイプロスかと「ネタあて」クイズをしながら眺める。
それにしてもコーエン兄弟。訳が分からないけどめちゃめちゃおかしい映画を作ることに関してはほんとうに天才的である。
いろいろな映画からの「引用」がある。
ベビーフェイス・ネルソンの銀行強盗シーンは『俺たちに明日はない』へのオマージュ。トウモロコシ畑のまんなかの十字路で悪魔に魂を売ったギタリストを拾うシーンはウォウルター・ヒルの『クロスロード』へのオマージュである。
『クロスロード』は話題にする人の非常に少ない映画であるけれど、同じ監督の『ストリート・オブ・ファイヤー』とともにウチダの mes filme favoris の一つである。
『クロスロード』ではラルフ・マッチオくん(最近見ないけど、元気にしてるのかしら)がモーツァルトとロバート・ジョンソン(伝説的なブルーズマン)に同時に憑依されて超絶的ギターテクニックを披露するというバカ映画史上類を見ないお笑いギターバトル場面がある。
その昔、渋谷から乗った東横線の車内で、一人の若者が友人にこの映画のストーリーラインを絶妙の語り口で要約していたのを立ち聞きして、あまりに面白そうなので駅から降りてそのままビデオ屋に借りに行ってしまったという逸品である。
みなさんにはコーエン兄弟の『オー、ブラザー』とヒルの『クロスロード』を「二本立て」で見られることをオススメするです。


映画を見たら眠くなったので、「三度寝」の昼寝へ。
夕方起き出して試験問題をぱこぱこ作る。
日が暮れるころ先週に続いて三宮にお買い物に出る。
「香典返し」の品を送りついでに靴を新調。
三宮でスパゲッティを食べる。朝、昼、夜と「麺づくし」の一日。
よい日曜であった。

そういえば、昨日は合気道の新歓コンパ。
合気道部の新人は二名だけなのであるが、東大気錬会からのピーちゃん、武庫川女子大の四年生のフナツさん、京大合気道部の "天才" 赤星恵照(「えしょう」と読むのだよ)くんもみんな「合気道部の新入部員」であるので、まとめて歓迎する。

赤星くんは先週土曜の甲野先生の講習会のときからの道友である。
二教の裏がぜんぜんかからないので、「座技呼吸法」のときに汚名雪辱とばかりぐいっと気を送って彼我の力量の差を示そうとしたら、「ぬりかべ」みたいにゴツンとはねかえされて、一瞬のうちにこっちの両足の甲の皮が真皮まで剥けたという剛の者である。
おかげで一週間靴を履くのも痛いし、もちろん合気道で正座をすることもままならない。グヤジー(@東海林さだお)のだが、何しろ好青年であるから生き霊を送って呪殺する気にもなれない。
その赤星くんが土曜の稽古に登場。彼も私と同じく両足の甲がズル剥けで、座技ができないと言う。
なんだそうだったのか。君もあれで剥けちゃったのね。
わはは、赤星くん、君はいいヤツだな。

というわけで、赤星くんと、彼と「東大vs京大」呼吸法死闘を演じて薄氷の勝利を収め東大気錬会の面目を保ったたピーちゃんと三人で、互いの健闘をたたえ合いつつ、橘さんと街レヴィ派のみなさんからの供物のシャンペンを痛飲。
聞けば赤星くんは熊本のお寺のご長男で、行く末は坊主になるやも、というホーリーな青年なのであった。
合気道をしていると、このように現代には見ることの希な武道系好青年たちと辱知の栄を賜ることができることがまことに悦ばしい限りである。
そこへわらわらと部員たちが乱入。
たちまち酒池肉林阿鼻叫喚の「いつもの宴会」が展開する。
話は途中から「愛って、何?」という「いつもの話題」に収斂する。
「好きな異性の条件」というクイズに全員がおおまじめに回答する。

ウチダはいつも述べている通り「美人でエゴイスト」が好きである。
なぜ、そのようなものが好きであるかについての分析をみなさんにしていただいたら、それはウチダが「セクシーでエゴイスト」な青年であったことが(信じられないであろうが、さような事実がたしかにかつてあったのである)遠因となっていることが解明された。
なるほど。
みんな「自分みたい」な異性が好きなのだ。

その他にも部員諸君の率直な告白から多くの驚くべき真理が明らかになったのであるが、泥酔していたので、あとのことは何一つ覚えていないのだ。