5月19日

2002-05-19 dimanche

土曜日曜は、広島で多田先生を迎えての合気道講習会である。
三年前から毎回参加させていただいている。
県立武道館は設備がすばらしいが、それよりなにより受講生にはじめて多田先生の指導を受ける人が多いので、多田先生が合気道の術理と思想について、たいへん懇切な初歩的説明をして下さるのがありがたい。
私はふだんは「指導者」なので、偉そうに懐手をして道場を歩き回り、「違うよ、そうじゃない、こうやるんだ」などと説教をこいているばかりなので、だんだん足腰が弱ってきている。
だが、多田先生が指導する講習会や合宿では、私も一介の受講生なので、タフな若い人たちにぶんぶん投げられてどたばた受け身を取ってると、日頃の鍛錬不足がたたって、はーはーぜいぜいと息が上がる。
とは言え、私は劫を経た「悪いおじさん」なので、疲れてくると、いきなり「説教モード」に切り替えて、「君ね、ちょっと術理の理解が違うようだね。ここはひとつじっくりおじさんの話を聞きなさい」とあれこれ「指導」を開始する。
これは別にその方の術技に問題があるのではなく、(問題がある場合もあるが)、単に私の息が続かないので、ズルしているのである。
思えば私もいくら稽古しても少しも疲れない若者だった時期もあった。
むかし真夏に東京都の指導者講習会があったとき、とんでもなく熱い道場で稽古しているうちに、高段者たちが次々と息が上がってリタイアして、道場の端に座り込んでいるのを見て、当時三段くらいだった私はぜんぜん疲れを知らずに、「あんだよ、あのジジーたちは、ふだん説教ばかりしているから、このザマだぜ」と憎まれ口をきいていたのであるが、自分がそのジジーになるとは想像だにしなかった。
ひさしぶりに道衣が汗で重くなるほど稽古をした。
これはほんとうに愉しい。

土曜日の夜は、そのままどどどと焼き肉屋へ直行して、「飲み放題食べ放題」で食べ散らかし、ホテルではウッキーの部屋にみんなで乱入して、冷蔵庫にあるだけの酒を飲み尽くす。
日曜の昼は、いつもの「みっちゃん」で「特製スペシャルそば入り」と生中二杯。
ビールがいちばん美味しいのは、広島の講習会と多田塾合宿の最後の夜である。
生酔いのまま新幹線で爆睡。

朝日と讀賣の読書欄で『「おじさん」的思考』が取り上げられ、どちらも好意的な(というよりは、「いーから、黙って買え」(@増田聡)的な)書評であった。
不思議な感じがする。
私は「変な」ことばかり言う人間として久しく白眼視されてきたので、こういうふうな暖かい賛意のことばを聞くと、うれしいより先にびっくりしてしまう。
しかし、ほめられて悪い気がする人間はいない。
さっそく朝日読売二紙を父の遺影に捧げてお焼香。
本がどんどん売れて、巨万の印税が入ってジャガーを買えますようにと父の霊にお願いする。