3月6日

2002-03-06 mercredi

朝から委員会が三つ。
委員会に出ると、人間が「他人の時間」というものに対してどれくらい敬意を抱いているかがよく分かる。
「他人の時間」をドブに棄てていることにまったく気づいていない人間がときどきいる。
これほど想像力を欠いた人間が、生身の人間をあいてに教育なんかできるのだろうか。
私は懐疑的である。
頭の良い人は「ハナシが早い」
それは、自分の用事で他人に時間を割いてもらっていることに対する「疚しさ」を感じているからである。

私の友人の中でもっとも頭の良い人の一人である山本浩二画伯の「ハナシの早さ」は尋常一様ではない。
電話が鳴る。

「はい、ウチダです」
「フグだけど」

思わず吹き出してしまった。
名前も名乗らず、時候の挨拶も抜きで、「単刀直入」に「フグだけど」。
まあ「だけど」がついただけでもいいか。
兄上さまも私の知友の中では抜群に切れる人であるが、兄上の場合は「メール」が短い。

「ミーツ送って」

これだけ。
電報じゃないんだけど。