2月1日

2002-02-01 vendredi

忙しいぞ、今日は。
午前10時、西宮北口駅の南口に集合して、西宮警察署の「術科始め式」へ。
総勢10名。(飯田、吉永、林、矢部、ウッキー、江口、澤、大西、右田)
お忙しい中、よく集まってくれました。どうもありがとう。
二台の車をつらねて警察署へ。入り口ですでに刑事さんみたいな人が待っていて、「神戸女学院のウチダ先生ですね?」と二台分の駐車スペースにご案内いただく。
おまわりさんたちにご案内されて気分はVIP。
警察署というのはできれば行かずにすませて一生を終えたいところであるが、今回は「ゲスト」であり、堂々と裏口から(変なの)署内に入る。
柔剣道の試合を拝見してから、式の最後に20分ほど時間をいただき、合気道とはどういう武道かをご説明したあと、一同の演武をご覧いただく。
むくつけきおのこたちの格闘のあとに、武道系少女たちが出てきてすらすらすいすいと合気道をやるわけで、このコントラストがなかなか美味しい。おかげで会場は拍手喝采。
講評では「名門中の名門女子大のお嬢さんたちがこのようにきちんと伝統的な武道を習練されているとは、まことにうれしい限りです。日本の未来は明るい」というようなありがたいお言葉を賜る。
カナちゃんが代表で、署長さんから記念品をいただく。(なんと包丁二本組・・・ちょっと意図を計りかねるが、とにかく実用的なものであることはまちがいない)
そればかりか朝日新聞の地方版の記者にインタビューしていただき、さらに署長さんから「みなさんでお茶でも」と法外な金額のお茶代をいただく。(お茶どころか10人で昼飯腹一杯食べてデザートにストロベリーサンデーを食べてコーヒーのんで、まだお釣りがきた。署長さんてば、太っ腹。)
合気道の演武をさせていただいて感謝されて記念品いただいてお茶代までもらっちゃって、もう申し訳ないくらいである。
しかし、先方は私たちがほいほいと演武に来るとは予想されていなかったらしく、「まず断られるだろうけれど、ダメもとでいちおう電話入れてみよう」と電話したら、二つ返事で「いきますいきます」と私がせきこんで返事したので驚いたそうである。
なにはともあれ、西宮警察の署長、副署長、警務部長など、地元警察の偉い方たちとお知り合いになれた。
人生にはいろいろなことが起こるものであるが、まさか自分が警察で「お話と演武」をするようなことがあるとは19歳のウチダには想像もできなかったであろう。
ともあれ、「合気道普及ならびに『地域に愛される神戸女学院大学イメージアップ大作戦』」を標榜した今回の出張演武はかくして無事終了。

署長さまなの豪毅なお茶代を使ってデニーズで爆食したあと、大学で英語の採点の続き。
答案については面白い話がたくさんあるのだが、まだ合否判定前なので秘密。
650人分の答案の採点、集計は夕方に無事終了。
こういう共同作業というのは、何だか文化祭の準備をしているときみたいで、なんとなくうきうきしてしまう。入試の採点でうきうきした気分になるなんて私一人だろうか。

その足で下川先生のお稽古へ。
『竹生島』と『安宅』と『養老』のお謡を稽古してから、舞囃子『養老』の稽古。新年会まであと3週間ほどまで迫って、ようやく全曲通して舞っても間違えないようになった。(けっこう長いのだ)
『養老』は神舞(かみまい)というアップテンポの舞なのだが、あまりほいほい走り回ると山神の威容が損なわれるし、かといってあまりのったりしていると野生の凄みが出ない。速く動くと間が抜けるし、遅く動くと間に合わない。スピードと重々しさという矛盾するものを同時に身体で表現しないといけない。
なるほど。
甲野先生のおっしゃっている「多要素同時進行」という武術的身体運用と舞はやはり深いところで通じているようである。