名古屋での集中講義の最終日。
『北北西に進路を取れ』と『サイコ』が素材。
用意していたノートは結局ほとんど使わず、ホテルの部屋で考えたアイディアとその場の思いつき。
不思議なもので、これまで何度も使い回ししているネタは、しゃべっている本人がその話に飽きているので、言い方を換えようとか、たとえを違うものにしようとか、その場でためらうことが多いので、つっかえたり、口ごもったりすることがある。
逆にその場の思いつきは、頭より先に口がしゃべっている「恐山のイタコ」状態であるので、口跡たいへんになめらかである。
聞いていた学生たちは、こちらが前から用意していたものであり、つっかえている方がその場の思いつきだと取り違えているかもしれない。
実は逆なんですよ。
解釈とは「次の解釈」の起点となるべきものであり、そこで解釈が停止することはあってはならない、という持論を語って五日間にわたる集中講義はフィニッシュ。
聴講生諸君お疲れさまでした。
そのまま学生たちをつれて、中村先生、葉柳先生と「打ち上げ」へ。
開放感ですっかりよい気分になり、中村先生にのせられるまま、もう好き勝手なことを吹きまくる。
さらに大人数でどどどと名古屋市内の繁華街である栄の居酒屋へ二次会に繰り出し、こんどは葉柳先生とむずかしい議論をするが、こちらはもうタガがはずれているので、でたらめ言い放題。
どうもこの集中講義でウチダの「でたらめエクリチュールの回路」に電源がはいってしまったらしく、しゃっくりのように止まらない。
しかし今回の講義でいちばんうれしかったのは、単に単位稼ぎのつもりで冷やかし半分に登録した(本人談)学生たちが、聞き始めたらおもしろくやめられなくなり全部出てしまったという感想を言っていただいたことである。
講義が楽しみで大学に来たのは入学以来始めてですという言葉にはウチダも感動。
「大学の先生ってこんなおもしろいこと研究してるんですか」
実はそうなんだよ。私の映画論のようなものを学術研究と言うのはいささか不穏当かもしれないけどね。
とにかくたいへんに愉快でかつ有意義な集中講義でありました。(本一冊分の原稿も書けたし)
お招き頂きました名大独文の中村先生はじめ諸先生、今回の集中講義の仕掛け人である葉柳先生、そして熱心に聴講してくださった学生諸君に感謝します。ウチダにとっては、すてきなクリスマス・プレゼントでした。気合いの入ったレポートを期待しております。
(2001-12-21 00:00)