12月19日

2001-12-19 mercredi

『大脱走』を解読する講義の最中にいきなり「エクリチュールの絶頂」が訪れ、次々とアイディアが浮かんでくる。「三組の三人組」というアイディアが天啓のように訪れ、その図式でばりばりと読み解くと、あらふしぎ、『大脱走』が母性をめぐる物語であったということがあらわになったのであった。
もちろん学生の前であるから、前から分かっていたんだよというような顔をしてしゃべっているのであるが、実は全部その場の思いつきである。
しゃべりながら、ああこの講義を録音しておけば論文が一本書けるのだが・・・とあせる。
学生たちは途中でノートをとる手を止めて、終わりなく暴走する私のスペキュレーションに呆然と聞き入っている。
私がしゃべり終わると、学生たちも緊張が解けて息をついているのが聞こえる。
講義が終わると走って宿舎に帰って、とにかく思い出せる限り、自分のしゃべったことをシグマリオンに打ち込んでゆく。
4時半ごろから始めて気がつくと11時。
しゃべるのは簡単だけど、それを書き写すのは大仕事である。
4時過ぎに講義が終わるのだから、毎晩どうやって暇をつぶそうかと大量に本を持ち込んだのであるが1頁とて読む暇がない。一晩中、机にへばりついて講義ノートを書いている。
もちろん来る前に250枚分くらいのノートはできていたのであるが、始めてみると、それではもの足りない。もっともっと書きたくなってくる。

さすがに三日連続で身じろぎもせずに仕事をしているので、背中が痛くなってきた。
早く帰って合気道の稽古がしたい。
今夜から宿舎が町中に移る。