11月14日

2001-11-14 mercredi

オフだけど、ものすごい量の書類書き。
昨日の夕方、事務室のメールボックスから取り出してきた書類だけれど、朝の10時から始めて、すべての書類を書き終えたのが午後4時。(昼飯抜きで)
学報の原稿が二本、来年のシラバスの原稿が三本、ゼミ紹介一本、自己評価委員会宛アンケートの回答が一件、修士論文のチェックが一件、その他。
私は官僚的作文の達人であり、字数は多いが内容のない官僚の答弁みたいのを書かせるとわれながら惚れ惚れするほど手際がよい。(内閣法制局のようなところに勤務したらきっとたいそうな出世を遂げたであろう)。その手際のよさをもってしても、疲れた。
やはり官僚的作文はつまらん。

これから「ひょうご講座」のノート作りの続きである。(これは楽しい仕事)
ソシュールとレヴィ=ストロースとバルトとラカンとアルチュセールについて、ひとり400字詰め原稿用紙5枚くらいにまとめるのである。
これはけっこう大変だ。
すでにこのノート作りで10時間くらいかけている。このあとまだ15時間くらいかかるだろう。
実際に講義をするのは1時間半。ギャラは15800円。でも、準備の時間を込みでならしたら時給600円くらいにしかならない。(時給10万円の『ミーツ』のバイトとえらい違いだ)
もったいないので、このノートをそのまま『論集』の原稿にすることにした。
「いきなり始める構造主義」(@竹信悦夫)である。
学術的には無価値であるが、(だってただの「要約」なんだから)、学生さんが参考書にするにはお手頃な内容である。
さらにここに「寝ながら学べる」デリダ論と「サルにも分かる」レヴィナス論を書き加えれば、新書一冊分くらいの原稿量になる。
どこかの出版社から仕事のオッファーがあったら、「おや、お客さん、運がえーわ。ちょうど今お手頃な物件が出たとこでっせ」といってこれを差し出すことにしよう。
おお、これはいい考えだ。
新書一冊600円として、印税が60円のとりあえず5000部として・・・おっし、30万円のバイトだ。まかりまちがって、1万部も売れた日には・・・・
おお、なんだか元気がでてきた。
こういうふうに何でも前向きに考えて、すぐにその気になれるというのが私の特技である。

半年ほど前に芦屋川のわきをにたにたして歩いているところを江口さんにみつかって、「先生、うれしそうですね。何考えてたんですか」と尋ねられたことがあった。
あのときは『ためらいの倫理学』が何万部売れたら5億円になるだろうと計算していたのである。(そしたら、芦屋川のかわべりに豪邸でも建てっかなと考えてほくそ笑んでいたのである。)
フツウの人は宝くじを買ったり、馬券を買ったりして、こういう夢を見るわけだが、
私は原稿を書きながら見るのである。
宝くじや馬券はこっちがお金を出して買うわけだが、原稿を書いて夢を見ているときはバイト代までいただける。
なんとお得な道楽であろうか。

ためらいの倫理学