9月26日

2001-09-26 mercredi

学校が始まった。さっそく政策構想委員会(別名「ゆめうつつ」委員会)の提言をうかがう科別教授会ロングヴァージョンが開かれる。
「ゆめうつつ」というわりには、「うつつ」のほうに軸足が乗ったシビアな提言を拝聴する。ブザンソン、バリ、神鍋高原と「ゆめ」のなかで5週間ほど過ごしてきた身は、なかなかうまく「うつつ」に着地できない。(ちなみに「ゆめうつつ」とは「夢現」と書くのだよ)
しかしいやおうなく仕事は始まる。
今日から毎日スーツを着てネクタイを締めて出勤である。とほほ。

10月も忙しい。

10月4日:卒論中間発表会(みんな、がんばってるかい! 12時からD-328ね。そのあと打ち上げ宴会。おでんと「炊き込みご飯」を用意して待ってるよ)
10月6日-8日:多田塾合宿
10月12日:教員研修会(私は実行委員長)
10月15日:ビン君講演会『ヴェトナムから見た日本』(4時半よりJD館大会議室)

ともりだくさん。

11月は大学祭、自由が丘道場40周年大会、月末は「ひょうご講座」で構造主義の講演。
12月は7日8日に甲野善紀さんの講演会・稽古会があって、年末は名古屋大学で映画論の集中講義。

そのあいだに『レヴィナス論』と『メル友交換日記』の校正をして、晶文社の「おじさんの系譜学」を書き上げて、『困難な自由』の翻訳も進めなければいけない・・・
あああ、考えただけで気が遠くなる。考えるのはやめよう。しかし、講演とか講義とかはノートを作らないといけないのであるが、一体、いつそんなものを作る暇があるのであろうか。心配である。

石原郁子さんという方から『女性監督の恋』という本を贈っていただく。

「キネマ旬報社の本とかフィルムアート社のシネ・レッスン・シリーズとかユリイカとかとにかくお金にならず人が読んでもくれないところに映画批評を書いております」

というのが同封のお手紙にあった自己紹介である。すてきな書き出しだ。
とはいえ、私は「アート系」の映画にとことん弱い。『ユリイカ』とかフィルムアート社の本とかがほめる映画というのはほとんど見ないで、『映画秘宝』が薦めるバカ映画ばかり見ている。だから、恐ろしいことに石原さんのご本が論じている映画36本のうち私が見たのは1本しかない。(ひどいね、これは)
この半月ほどのあいだに私が見たのは『ラッシュアワー2』『ファイナル・ファンタジー』『ザ・セル』『プルーフ・オブ・ライフ』『クリムゾン・リバー』『アンブレイカブル』。ゲージツ性とか問題意識とか美学とかいうものを組織的に欠如させたものばかりみているわけであるが、それは私が単にバカ頭の娯楽志向であるというだけでなく、(いいわけさせていただくならば)映画を非常に分析的に見ているためでもある。
私の映画論は「無意識の前景化」「葛藤の物語的解決」のための装置として映画を解釈するという学問的立場を採用しているため、どうしても分析「しやすい」素材を選ぶことになってしまうのである。(ほんとだってば)
しかし、食わず嫌いはいけないね。石原さんの本を読んで、「恋の映画」なんかもちょっとは見てみることにしたい。石原さんどうもありがとうございます。ご住所が書いてなかったので、この場を借りてお礼申し上げます。読んだら感想も書きますね。