9月12日

2001-09-12 mercredi

などということを書いたあとレヴィナスの翻訳をしていたら、学生さんがやってきて「なんだか大変な事件が起きたみたいで、テレビのまえに街の人がたかってました」というのでさっそく部屋のテレビをつける。おお、なんということであろう。マンハッタンに「カミカゼ」である。(「カミカゼ」は vocabulaire international に登録されており、イスラエルにおける自爆テロはこちらではすべて「カミカゼ」と呼ばれている。)

フランス語聞き取り能力を 120 %に上げてテレビに見入る。

四機のハイジャック機のうち二機が WTC ビルに、一機がペンタゴンに、一機がピッツバーグでそれぞれ爆発したと言うこと以上は分からない。死者は数万に及ぶかも、というだけで被害の規模も分からず、犯行声明もない。大統領のコメントがあって「国家機能は何が何でも機能させる」と力んでいる。大統領が国家をコントロールできなくなっていると国民が不安を感じているのではないかと大統領が思うほどのパニックだということである。
テレビのコメンテイターも「アメリカや NATO がこのように軍事経済の中枢をピンポイントでアタックできるポテンシャルをもったテロリストがいることをまったく予期できなかったということは、情報戦における敗北である」ときつい。
シラクとジョスパンは悲痛な顔でアメリカ国民への連帯とテロリスムへの戦いを宣言している。
フランスのテレビでは、アナウンサーが興奮して、「第二次世界大戦以来」とか「パールハーバー以来」と言っている。(今朝の『フィガロ』の一面は「戦争始まる」であった。)
午前1時近くまでテレビを見つづけるが、まったく新しい情報が入らず、WTC ビルの崩壊と逃げ惑うニューヨーク市民の映像だけを繰り返している。

今朝のフランスの TV は通常番組に戻っているので CNN を見る。
廃墟と化したマンハッタンの映像はすごく既視感がある。(最近『ファイナル・ファンタジー』で見た映像とそっくり。)
KUONI に電話してシャルルドゴール空港に混乱はないかどうか尋ねる。とくに問題はないそうだが、昨日から荷物の検査が厳しくなっているそうである。(当然だけど)
学生たちは日本に無事に帰れるかしらと心配顔である。
『フィガロ』にはアンマンで「広島の仇だ」と日本赤軍が犯行声明をしたという記事を載せている。どうしてこういうバカなことを言うやつがいるんだろう。

もうすぐバスが来る。
パリ最後の日はこんな感じです。