『リベラシオン』に珍しく日本関係の記事が二つ出ている。
ひとつは「いじめ」(Ijime)。日本固有の現象ということで「イジメ」は vocabulaire international に登録されている。
昨年一年で不登校児童が 26000 人に達したことに驚きつつ、フランス人記者は次のように分析している。
「この問題の真の責任は日本の教育システムにある。学業の厳しさでは好評だが、組織的な詰めこみ教育が生み出すストレスで不評な日本の学校は人間関係を無視している。システムの頂点にいる教師たちが問題だ。彼らは自分たちの専門に閉じこもり、生徒のことを見ようとしない。子供たちが心の中で何を感じているか知ろうとしていない。」
なるほど。
その反対側には宮崎駿の『千と千尋の神隠し』が 1000 万人を超える観客動員を記録し、『パールハーバー』と『A.I.』に圧勝、Naucicaa と Princesse Mononoke の巨匠の新作は日本人観客を魅了した、と記者は伝えている。
「その意志の力で困難を克服する千尋のイメージが経済危機と社会的分裂に苦しむ時代に受け容れられた。千尋はその魂を失いつつある日本のいわば解毒剤である。」
誠実と優しさと勇気が人間のもっとも大切なものだ、という宮崎駿のまっとうすぎるメッセージが日本で支持されたことを、フランス人特派員はわがことのように喜んでいる。
私も帰ったら見に行かなくちゃ。
急に温度が下がったせいか、なんだか寒気がする。
いろいろのお誘いをお断りして、風邪薬をのんで、今日は一日おとなしく部屋でじっとしていることにする。ときどき原稿を書き、漱石の『文芸論集』を読む。
お昼にちょっとだけ街へ出て、サンドイッチと水と『リベラシオン』を買い、すぐに部屋に戻って、またパジャマに着替えてごろごろ昼寝をする。夕食は「出前一丁」。やはり日本のラーメンは「腰」がある。
明日はいよいよブザンソン最後の一日である。
(2001-09-06 00:00)