8月29日

2001-08-29 mercredi

朝夕の気温がぐんと低くなる。すでに秋の気配。うれしいことである。
二日酔い気味の頭をゆすりながらどろどろ起き上がり、街のサイバー・カフェなるところへ赴き、わがホームページを検索してみる。
当たり前であるが、すべて文字化けしていて、まったく読めない。
メールで日記を送ろうと思ったのであるが,そもそも FD ドライブがついていない。
仕方がないので、とりあえず BBS にフランス語でメールを送っておく。でも誰も読めないだろうなあ。
部屋にもどってラーメンを食べたら、ちょっとしあわせな気分になってそのままどろんと昼寝。

今日は合気道のお稽古の初日であるので、2時ごろ起き上がって、フランス語で合気道の説明をどうやるか原稿を作成する。
「体を割る」とか「浮き身をかける」とか「手の内を締める」とかいうのをどうやってフランス語で言うのであろうかとあれこれ考えているうちに、ブルーノくんと越くんがお迎えんくる。
4年ぶりのサントル・ガルシエ。道場長のイワン・ガルシエさんと久闊を叙す。イワンさんはすごく感じのよい武道家である。イワンさんのような親子二代にわたる草の根武道家の精進のおかげでヨーロッパにおける日本武道の普及が果たされているわけで、ほんとうにありがたいことである。自分の道場を東洋からやってきたどこの馬の骨とも知れぬ無頼の武道家に明渡して、「好きに使ってください」というようなことはなかなか言えるものではない。
今日のお稽古のお弟子さまは、ブルーノ君、越君、ゆりさんの三人。別にフランス語で説明する必要はなかったのである。
体操と呼吸法をやってから、体捌き、転換、呼吸投げ、天地投げ,四方投げを、わりと細かく説明する。
私はもともとが凡庸な武道家ではあるし、膝にガタがきているので、あまり使い物にならないのであるが、さいわい 25 年間みっちり稽古だけはしてきているので、術理を体系的に説明することについては、そこそこのことはできる。
しかし、かつてこれほどの集中をもって私の稽古につきあってくれた人はいないくらいに三人の受講生は熱心であった。
この人たちに自分のできる最高の技を見せてあげたい。いまこの膝の痛みを去ってくれて、ふだんのように身体を使えたら、その代償に寿命が多少縮まっても構わないと念じた祈りが届いたのか、稽古の間は膝はあまり文句を言わなかった。
ブザンソン滞在中にあと三四回稽古の機会がある。どうかそのあいだだけでも膝が痛み出しませんように。

3週間ぶりの合気道ですっかりよい気分になって、見学に来ていた二人の日本人女子学生とイワンくんもまじえて街に繰り出す。
このお二人は独協大学の仏語科の学生さんで、なんとお一人は一戸とおるくんのゼミのひとであり、お一人は鈴木道彦先生をご存知であった。
昨日の吉国さんも大学の最初のフランス語の先生が鈴木道彦先生。
鈴木先生の痛快なるお人柄について昨日につづいて今日もまたビールをのみつつ談じることになろうとは。ワッタスモールワールド。
そのまま7人で私のブザンソンにおける restaurant favori である Lotus d'or へ繰り出す。
ここのカンボジア風味の「ラーメン」にかつてどれほど多くのスタジエールが感激の涙をこぼしたことであろうか。
さっそく、「ラーメン」と海老ギョーザと揚げ春巻きを賞味する。美味也。
なんだかやたらのりのよい会食者たちばかりで、8時から12時まで、痛飲。
日本の若い女の子たちは海外でもほんとうに元気である。
フランスにくるのは女の子ばかりで、男子はさっぱりこないね、とイワンさんに言われたが、ほんとうにそうである。
日本の未来は君たちのものである。がんばって欲しい。