ほんとうならもう初秋の気配のはずなのだが、パリは残暑が厳しい。
今日は 35 度。
パリにくると必ずオランジュリを訪れてモネの「睡蓮」を眺めながら昼寝をするというのが私の愉しみのひとつである。(オランジュリの「睡蓮」の部屋は非常にエアコンがよく利いているので、真夏でも快適。おまけに昼寝向きのソファがある。昼寝から目覚めたぼんやりとした視野いっぱいにモネのあの「とろん」とした睡蓮が広がっているのは極上の快感である。)
入り口までいったのに、残念ながら今年は改装工事中で、2004 年まで「睡蓮」は見られない。
ではモネの別の画を見に行こうかしらとオルセーに向かったが、あまりの炎天に頭がくらくらして、涼しいホテルに戻ることにした。
途中で気が変わって、サン・ポールで下車して、ピカソ美術館に行く。ピカソは見ているだけで元気がでるので、通常は旅の終わりごろの体力気力とも尽き果てたころに訪れることにしている。今回は、初日に来てしまった。
いつ見てもピカソはすごい。
すべての形象がどっしりと大地から立ち上がっている。大地のエネルギーを吸い上げているみたいだ。
芸術にはほとんど物理的な力がある。
はじめてオルセーに行った時、印象派の部屋にはいった瞬間にうしろから強い視線を感じて振り返ったらゴッホの画だった。
セザンヌ、モネ、ルノワール、マチス、みんな身体にびしびしと何かが伝わってくる。どんなに巧く描けていても、まったく「力」のない画というのもあるし。
これはいったいどういう仕掛けになっているのか。私にはうまく説明できない。
ピカソで元気になったので、そのまま部屋にもどって『メル友交換日記』の校正をする。どんどん進んで、とりあえず校正は終了。
夕方はジローさんご夫妻とカルチェ・ラタンの St. Julien-Le Pauvre 教会で Herbert du Plessis というピアニストのショパンの演奏会に行く。150 フラン。ピアノのまん前の第一列で一時間半たっぷりショパンを聴く。ショパンもなかなか過激であるが、曲想が似ているので、途中で旅の疲れもあって眠気が襲ってくる。
アンコールはリストの la Campnella これはお得意のレパートリーらしく、超絶技巧をご披露頂いて、観客はおおよろこび。
そのあとジローさんちで夕食。(カレーライス。ちゃんとカレールーを日本から持ってきたそうである。用意周到)
暑さと酔いと眠気でとりとめもない話をしているうちに 11 時となり、歩いて3分のホテルに戻る。さすが四つ星だけあって、快適にエアコンが利いている。お風呂に入って,ベッドで漱石の『猫』を読んでいるうちに5分で睡魔が襲ってくる。ぐー。
(2001-08-23 00:00)