6月4日

2001-06-04 lundi

ようやく下川正謡会が終わった。
湊川神社までご来駕下さいましたみなさまにお礼申し上げます。
おかげさまで楽しい初舞囃子をつとめることができました。
実に気分よかったです。あれは。
しかし、朝10時半に素謡『藤戸』のワキツレで出たあと、午後5時半まで7時間近く待たなければいけない。さすがにくたびれた。
切り戸口のところに女学院の能楽部の諸君が三人いたので、ときどきおしゃべりをしていたのであるが、その子たちに本番前に「先生、眼の下にクマが出来てます」と言われた。
打ち上げでビールと紹興酒を頂いて、家に戻って、お風呂に入ったら、もうまぶたが下がってきて、午後10時に就寝。眼が醒めたら、次の日の午前11時。13時間眠ったことになる。
全身の細胞からこれまで抑えていた「疲労物質」が細胞膜を破ってとろとろと流れ出してきたような感じで、もうベッドから一歩も動きたくない。
これで、5月はじめから一月にわたって続いた「必殺合気道月間」と「必殺能楽週間」が無事に終わったのである。疲れもする。
ようやくウチダも本来の「学究生活」に戻ることが出来る。
「学究生活」はほんと楽だ。
本読んで、原稿書いて、よしなしごとを夢想していればいいんだから。
思索の世界は、私一人の世界である。
本を読んで意味が分からなくても、夢想が奔逸してしまっても、原稿を書きすぎても、それによって、直接的に迷惑を蒙る人はいない。(間接的に困る人はいるけれど、それはしばらく先の話。)
とりあえず、誰にも迷惑をかけないですむし、誰にも怒られない。
そもそも、私は存在しているだけで、誰かに迷惑をかけたり、誰かを怒らせてしまう人である。だから、他人といるときは、いつも「誰かを怒らせてないかしら」と気をもんでいないといけない。気疲れする。(「誰かを怒らせてやろう」という邪念を発しているときもあって、それはそれで自分の発する「邪気」に当たって、気疲れするのである。)
一人でいられるときには、ほんとうに心安らぐ時間なのである。
さあ、いよいよ「仕事の時間」だ。