卒業式。
今年の卒業生は合気道部だけで8人。それにゼミ生が12人。
いちどに20人の教え子たちがいなくなると思うと悲しい。
でも、しかたがない。
月に群雲、花に風
さよならだけが人生だ
春はわかれの季節なんだよね。
るんちゃんとともに過ごす時間もあと7日。(そのうち3日は合宿でいないから、実質4日だけ)
思えば、1989年4月3日から、12年間におよんだ父子家庭生活もあと一週間で幕を閉じることになる。
るんちゃんは毎日マンガの整理(持って行くのと古本やに売るのを選別しているのである)と私のCD、レコードからMDへのダビング作業をしている。(モンキーズとかツェッペリンとかバッファロー・スプリングフィールドとか)
今日はいっしょに芦屋のシャンティでカレーを食べる。あさっては木繁のラーメン。しあさっては手作り餃子である。(るんちゃんのご指定めにう)
私はろくでもない父親であったが、娘と「いっしょにご飯を食べた」ということに関しては、だれにも後ろ指をさされない自信がある。(夕食の「親子共食率」はたぶん99%くらいに達する)
「この鶏肉美味しいね」とか「ラーメンにはコーン缶だね」とかいうどうでもいいような会話をしただけだけれど、私たちは過去12年間、ほとんど「同じもの」を食べて生きてきた。
これは人間が共同体を形成してゆく上ではけっこう大事なことだと思う。
儀礼としての人類学的な意味でも、同居者の器質的同質性を高めるという生物学的な意味でも。
なんだか泣けてきたぜ。
しくしく。
ま、感傷はさておき。
極楽スキーの会は「爆装派」ワルモノ先生の圧倒的な登場と、「爆走派」ウエノ先生のカーヴィング購入によって、従来の書記局主導の「プチブル穏健派路線」への批判の高まりが懸念されていたが、ワルモノ先生のドタキャンと、爆走派の逸脱行動に対する「同行の次女によるきびしいチェック」のせいで、既定路線が粛々と維持され、その反動的体質がますます強化される、という予想外の結果を見た。
政敵の一時的退潮に乗じた書記局派はこの機に一気に大勢を決すべく、あらたに予定外の「極楽スキー三箇条」の制定を画策、キャスティングボートを握るジェンダー研系の極楽レディースとの連携に成功、多数派を制した。
あらたに制定された極楽スキー三箇条とは、
(1)向上心を持たない
(2)技術の不足は金で補う
(3)シュナイダー、牛首滑走禁止
知性と美貌は衰えをしらぬまでも、足腰に衰えを隠せない極楽レディースが従来の過激派路線から、ブルジョワ的な現状肯定路線に転じたことに、会の内外からは「おおお」という驚きの声がひろがっている。
この極楽レディース攻略にさいしては、書記局は「極楽スキーの会の宗教法人化」を取引のカードに使ったものと見られている。
書記局を仕切る「極楽派」はほんらい無思想的武闘派であるが、無思想ゆえに、しばしば節操のないオカルト志向を示していたが、今回「やまびこゴンドラリフト」内での非公式折衝において、「スキーの本質は行であり、瞑想であり、宇宙との一体である」という新綱領を唐突に提唱し、「瞑想」という言葉に親和的なピアノバー派の懐柔に成功した。
その後も、天候がよいとか雪質がよいとか飯が美味いとか風呂が気持ちがよい、とかいう万象をことごとく「スキーの神様のおぼしめし」である、という一元的な説明によって乗り切り、自分たちの「ひごろの行い」に対して、過分とも思える好条件でスキーを愉しんでいることに一抹の不安を感じていたレディースの心理的弱点につけこんだ書記局派の老獪ぶりがきわだった。
宗教法人としての極楽スキーの会は当面、次のスローガンを掲げることを決定している。
「スキー上人なく、人下スキーなし。われはスキーなり、われはスキーと一体なり。」
宗教法人としての新教典(内容未定)は題名のみ「極楽神礼賛」に決定している。
前回、ウチダゼミのレポートをいちはやく送ってくれた「かしこ」さんから反論が寄せられたので、採録しておきたい。
内田先生こんにちは。こないだ、誰よりも早く春休みの宿題レポート「これで日本は大丈夫?」を提出した「かしこ(かし子)」です。ホームページに載せていただいて、おまけに先生のコメントまでいただいてありがとうございました。
すぐ消えちゃったみたいですけれど、あたしのレポートについての先生のコメント、しっかり読ませていただきました。あれから一週間、いろいろ考えてみたけど、やっぱり腹が立ってしょうがないので、反論させていただきます。
あたしが今一番心配なことは、団塊の世代の父たちが集団自殺することだって、レポートに書きました。いつも競争させられてばかりで、苦労してやっとここまで生きてきたのに、最近ではリストラの対象世代にされて、きっと養老院もいっぱいだろうし、もうすぐキレてしまうんじゃないかしら、意気地のないおとーさんたち、酒を飲んで愚痴言って暴れたあげく、多分集団自殺をしてしまうに違いない、そうすると、人口ピラミッドがいびつになるし、生命保険会社は保険金の支出に耐えられなくて倒産するし、日本経済は壊滅してしまう。だから、日本全体でもっと父たち団塊の世代をケアする方法を、今のうちに考えてほしい、それが日本を救う道、そう書いたのですが、先生のコメントは次のようでした。> レポートありがとうございました。でも、先生はあなたとはちょっと意見が違います。
> 人口ピラミッドが多少いびつでも別に誰も困りませんし、日本の生保業界は鬼のようなところですから、「団塊世代集団自殺」は阪神大震災と同じように「内乱・革命・天災」に準じる事案として処理して、保険料不払いにすることは確実で、金融の混乱の心配もありません。それに、自殺するより先に、団塊の世代は幼児期からためこんだ発ガン性物質のせいで、五十歳を過ぎたあたりからばたばたと死んで行くはずです。
> いずれ私たちの世代が存在したことそのものが、歴史的な「ボタンのかけちがい」のようなものとして忘れ去られてゆくでしょうから、団塊の世代が集団的に消滅しても「まるで日本は大丈夫」です。どうぞ、ご安心下さい。
> お父さんにはたっぷり生命保険をかけて、毎日お酒やあぶらっこいものを食べさせてあげて下さい。きっと「なんてかわいい娘なんだ」と泣いて、お母さんではなくて、あなたを保険の受け取り人にしてくれると思います。
> がんばって、いいこぶって下さい。人口ピラミッドがいびつでも別に誰も困らないって先生はおっしゃいますが、私が言っていることの深い意味を先生はお察しになって下さらないことが残念でなりません。
あたしたちの生命は、連綿と続く生命連続体のベルトコンベアに乗っています。そりゃ、たぶん人生は無意味でしょうけれど、生物学的に言ってこの連続体を人為的に断絶させることは、安易に為すべきことではないと思います。でも、すでに存在している世代が集団消滅するだけだから、生命連続体を断つのではないと、先生は言うのでしょうね。(集団消滅って、小松左京さんの SF が得意の分野ですね。面白いこと教えましょうか、内田先生。小松左京さん、いま鬱病で、重症の引きこもり症なんですって。「噂の真相」に出てたよ。関係なかった、もとい。)しかし、特定の世代が集団消滅することは、残された人たちの精神生活に重大な悪影響を及ぼすということ、内田先生は理解できないのでしょうか。デリカシーのない方ですね。反省して下さい。
具体的な例を挙げます。あたしたちの世代をどうのこうの、団塊の世代の人たちは特にうるさく批判します。そういう時あたしたちは、「うるさいわねぇ、けっ、なによあの人」「構うなよ、あいつあの悪名高い団塊の世代で、全共闘くずれなんだから」「そっか、それじゃしょうがないか」というような会話をします。それで私たちの精神は浄化されるのです。団塊の世代は、そういう大切な役割を担っているのです。勝手に消滅されては、私たちも困るんです。お分かりになりましたか。人口ピラミッドがいかに大事かということが。
次に、日本の生保業界は鬼のようなところですから、「団塊世代集団自殺」は阪神大震災と同じように「内乱・革命・天災」に準じる事案として処理して、保険料不払いにすることは確実で、金融の混乱の心配もありません。と先生はおっしゃいます。
これについては同感です。ほんとうに、生命保険業界は鬼ですね。生保レディーなんて、親戚を一通り回ればそれでお払い箱で、もっと頑張ろうとすれば、色仕掛けで助平野郎のご機嫌をとらなければならないのだそうです。女性をなんだと思っているのでしょう。腹立たしいです、書いていて頭に来た。
だいたい、人の命を商売道具にするなんて許せない。生命保険業なんて「賤業」の最たるものです。(差別語かしら)
「賤業」といえば、失礼ですが、大学教師なんかもその範疇だと思います。とくに文学部。工学部や医学部は、社会に有用な学問ですが、文学部の先生って、具体的に社会に有用な何かを生み出したことがあるのですか。どーでもいいことを、ああだこうだって、枝葉末節にこだわったり重箱の隅をつついたり、人の論文のアラ捜しをしたり、ろくでもないことばかりしています。「人生とは何か、どう生きるべきか」なんて、大げさなこと言って、そんなこと、分かるわけないでしょ。それに、一言じゃ言えないわよ。あえて言うなら、人生なんて「色と欲よ」。そんなこともわからなくて、よく大学の先生なんてやってられるわね。バーカ。
興奮して、はしたないことを申上げました。失礼しました。もとい。
うちの父も、酒乱ですから当然重症アルコール性肝炎です。ガンマ GTP は 400 を超えています。糖尿病ですし、ハゲはじめていますし(ハゲは病気じゃなかった、もとい)、最近は前立腺肥大で、おしっこが出ないと言っています。大腸憩室炎もあります。病気の缶詰みたいです。よほどろくでもないものばかり食べていたのでしょう。私にも影響が出なければいいですが...
先生のコメントはさらに続きます。> お父さんにはたっぷり生命保険をかけて、毎日お酒やあぶらっこいものを食べさせてあげて下さい。きっと「なんてかわいい娘なんだ」と泣いて、お母さんではなくて、あなたを保険の受け取り人にしてくれると思います。
先生の論理は粗雑です。さっき、保険金は出ないと言われたばかりではないですか。団塊の世代の集団自殺は、阪神大震災に準じる扱いを受け、生命保険をかけても無駄なのに、無駄な保険金をあたしがなぜ掛けなきゃいけないんですか。
きっと、あたし程度の人間には、論理矛盾なんかには気がつかないだろうって、見くびっていらっしゃるのね。うーん、悔しい。キーッ。そこまで馬鹿にするんですね、覚えてらっしゃい。ゼミの部屋、火事になっても知らないわよ。> がんばって、いいこぶって下さい。
内田先生は最後にこうおっしゃいました。
かし子がほんとにいいこだったら、先生のゼミなんかに入りません。ご専門はブランショ(何だか歯ブラシの名前みたい)、レヴィナス(車の名前みたい)なんていう難しそうな学問なのに、本当の専門は合気道と居合と杖道と謡という噂で、普通に考えると(どう考えても)性格破綻者のように思われますが、一見支離滅裂に思える(その確信は日に日に深まります)そういう先生に興味があって、ついふらふらとゼミに申し込んじゃっただけなんです。優しそうだし。
でもかし子、後悔しないわ。
はい、かしこさん長いご批判をありがとうございました。
ヴァーチャルキャラクターの造形力によって、その人の想像力のレンジはかなり測れるのですけれど、今回のかしこさんは「色と欲」とか「全共闘くずれ」とか、大学生の語彙には存在しない死語を使ってしまってちょっとぼろを出してしまいましたね。
もう少しお酒を控えてからレポートを出すようにしましょう。それにしても、ガンマGTP400というのはすごいですね。
(2001-03-19 00:00)