2月26日

2001-02-26 lundi

冬弓舎の内浦さんから、ホームページで『ためらいの倫理学』の予約受付を始めたというご連絡を受ける。
冬弓舎のホームページで、本の表紙のヴィジュアルだけでなく、鈴木晶先生の「帯文」や、増田さんと山本画伯の「推薦文」も読めるし、22編のテクストの「解題」も読める。(本文は読めません。当たり前ですけど)
内浦さんから「予約が一冊入りました」とうれしそうなメールが来た。
予約一冊で喜んでくれる編集者なんて、なかなか探してもいないぞ。

ためらいの倫理学

日曜日は一日レヴィナス論を書き続ける。
途中でラグビーの日本選手権をやっていたので、休憩。
私はほとんどどのようなスポーツ中継も見ない。野球も大相撲もゴルフもマラソンもサッカーも、もちろんオリンピックにも興味がない。
だがラグビーだけは例外である。
ラグビーは私が実際にその場に行って一度だけ見たことがある、数少ないスポーツである。(あとは川崎球場に一度行ったことがあるだけ)
行ったのは、国立競技場での早稲田―明治戦である。
30年くらい前、明治のスタンドオフが松尾雄治君で、早稲田のウィングに藤原優君がいた時代の話である。
私は松尾君の華麗なステップと、藤原君の突進力にけっこう興奮したことを覚えている。
それからあと私は冬になると、こたつにはいってミカンを囓りながらTVのラグビー中継を見ることを「人生における小さいけれど確実な幸福」(村上春樹いうところの「確小幸」ね)の一つに数えるようになった。
だいたいこの季節の日曜日の午後というのはからっと晴れ上がってぴうぴう北風が吹き、なんだか街へ出るのもおっくうだし、お酒をのむにはまだ早くて、気の利いたミステリーを読みながらごろ寝するとかラグビー中継を見るというのに絶好の季節感である。
ラグビー中継はだいたいNHKでやるので、CMが入らないし、実況のアナウンサーもあまりよけいなことを言わない。(「ゴールゴールゴルゴルゴルゴル・・・」みたいなことは言わない。)解説者も宿沢さんとか大西さんとか平尾さんとか大八木さんとか林さんとか、そういう「ぼそっ」と専門的なことを言うタイプのひとばかりで、音声が静かなのがよい。それに解説者が選手の名前を「伊藤くん、いまブラインドを衝いたのは、いい判断でしたね」というふうに、「くん」づけで呼ぶのも私は好きだ。
それにほかのプロスポーツには、「ひいきのチーム」というものがない私であるが、ラグビーははっきりと「ひいき」がある。
それは早稲田大学と神戸製鋼である。
早稲田と私は深い関係がある。お兄ちゃんが在学したことがある、とか私自身が1970年に法学部と政経学部を受けたことがあるとかいうような通り一遍の関係ではない。
私はなんとひさしく早稲田大学所属の研究者でもあったからである。(早稲田の社会学研究所の特別研究員という資格を1990年から去年まで保持していたのである。)
神戸製鋼はいわずもがな。私は神戸市民である。
神戸は平尾、大八木、林、細川、堀越といった綺羅星のごときプレイヤーを輩出したが、現在もすばらしいチームである。
いまはもちろんセンター大畑大介くんの大ファンである。同じ「ダイスケ」でも、松坂大輔より大畑大介くんのほうが圧倒的にかっこいいと私は思う。(お正月の番組ではケイン・コスギに勝ったし)
昨日はサントリーに競られて危ないところであったが、きっちりと同点優勝を決めてサントリーのスクラムハーフ永友くんを泣かせていた。
というわけで、私は意外なことに、ラグビー好きだったのである。
ラグビーのいいところは、ラグビー好きのひとがぜんぜん周りにいないので、決して酒の上の話題にならないということである。おじさんたちが居酒屋で口角泡を飛ばしてスポーツの話をしてもりあがる、というのが私は大嫌いなのである。