11月10日

2000-11-10 vendredi

住吉で狂言の会があるので、寒空にバイクを走らせて見にゆく。
だしものは『千鳥』と『二人大名』。京都の茂山家から茂山七五三(しめ)さんと茂山宗彦君、地元の善竹家から善竹隆司君と善竹隆平君。人気の若手狂言師の競演である。プロデューサーは(「おさわがせ」講演の第一回にお越し頂いた)大倉流小鼓の久田舜一郎さん。
見てびっくりしたのは茂山宗彦君の変貌。
少し前までは細面のさらさらロングヘアで、どちらかといえば「アイドル系」の狂言師だったのに、これはいかなることか。あたまはざっぱり坊主刈り。芸風はもうお祖父ちゃんの茂山千作さんのまんま。「ぐははは」と破顔一笑すると、会場のこどもまでがつられて笑い出す、骨の髄までコメディアンに化身していた。
ああ、宗彦君の身にいったい何が起こったのであろう。
おそらく彼はうつろいやすきものを棄て、芸道に生きることを選んだのであろう。
茂山宗彦君は大きな壁を突破し、まっすぐ人間国宝・茂山千作の芸風を継ごうとしている。
弱冠25歳。
狂言界の明日は明るい。(能楽界はだいじょうぶかね)