10月10日

2000-10-10 mardi

多田塾合宿から帰ってきました。
本学からは総勢11名。全体では120名。群馬の山奥で二泊三日の心と身体が澄み渡るような合宿でした。
部員諸君の多くにとって、多田先生から直接指導を受ける機会はあまりない。今年はさいわいにも5月に広島で講習会があり、すぐに全日本演武会、翌日に五月祭演武会。こんどの合宿に続いて11月には奈良県支部道場創立35周年記念演武会での講習会が予定されており、多田先生をまぢかに感じる機会が例年になく豊かである。
お目にかかる機会が増えたせいもあって、部員のあいだの「多田先生崇敬」の想いは沸騰点に向けて急上昇、今回の合宿の大量参加とあいなったのである。
今回は群馬の山中ということで、前日から車三台をつらねて出発、まず現地近くの老神温泉で美食と湯治で身体をやすめ、しかるのちに万全の体制で合宿に突入というプログラムが立てられた。
参加者は飯田先生、溝口さん、吉永さん、サッポロから武者修行中の田口さん、ウッキー、佳奈ちゃん、楠さん、おいちゃん、江口さん、澤さん、それに私。
中国道、名神、中央道、長野道、上信越道、関越道の6高速道路を踏破して老神温泉へ。所要時間9時間半。さっそく露天風呂に入って「前夜祭」大宴会。
多田塾合宿参加への高揚感と温泉大名旅行の上機嫌があいまって、前夜祭はいきなりトップスピード。「全駄連」(全日本駄洒落連盟、家元・江口さやか)「全魔連」(全世界魔法使い連盟、教祖・林佳奈)「全麦連」(全日本麦チョコ連盟、開祖・神原麻理)の三団体が老神温泉牧水亭において相次いで発足し、ただちに段位の発行条件などについて細則が定められた。
ウッキーは成立したすべての団体の「第一号弟子」となり、みずから「全弟子連」を発足させたが、会の性質上、会員はウッキー一名にとどまった。ウチダは全駄連、全魔連の「理事長」職を一方的に宣言して独占、その権力的な体質を遺憾なく発揮したが、全麦連については後難を恐れてか、「私は麦チョコ芸などというものは知らない」と無関係を装う意向である。
「全駄連」ではすでに1級を取得していたウッキーが帰途、駄洒落連発芸により(個々の作品のクオリティには疑義が呈されたものの、「連発」を評価されて)家元から初の「初段」を允可され、同時に「江口家さ右」の芸名を授与された。
「全魔連」には4回生全員とウッキーが参加、さっそく牧水亭において「初級・魔法講習会」がもたれ、目線の使い方、指先を口元によせる仕草、発声法などについて、「初心者形」の稽古が熱心に行われた。マジカル・佳奈ちゃんの熱意あふれる指導の成果あって、魔法の「発表会」となった多田塾合宿期間中には、かいがいしく立ち働く弟子たちが「やきそばソース」や「奈良までの航空券」をゲットする姿が見られた。
そんなことばかりしていたので、合宿所についても「宴会モード」から「稽古モード」への切り替えに一同かなり苦心していたようである。
合宿についての詳報は、書くことがあまりに多いので、合気道のホームページの方にまたあらためてご報告させていただきます。
帰途は渋滞や内田の居眠りなどもあり11時間半を要し、家に着いたのは真夜中。
しかし、一同無事に、多くのものを得て帰って参りました。
ああ、楽しかった。お世話になったみなさまに心からお礼申し上げます。
すばらしい時間を与えて下さった多田先生。合宿のすべてでお世話になった坪井先生。同室で貴重なお話をしてくださった窪田先生。ハートウオーミングなご配慮をして下さった原さん。ありがとうございました。ほかのみなさんもあまりに数が多すぎてお名前を挙げ切れませんが、ほんとうにありがとうございました。

などと気楽なことを書いていたら、藤田博史さんからメールが来た。
fujita hiroshi って誰だろうと思ってメールを開けたら『人間という症候』の藤田博史さんであった。
うわ、これは大変。
「ご本人」に読まれてしまった。
繰り返し書いているとおり、私の書評は「本人は読むはずないよね」という楽観的な想定のもとになされている。だから本人が読んだら気を悪くするようなことも書いてしまうのである。しかし、現在は検索エンジンも発達しているから、うっかりしたことを書くと、たちまち露見してしまうのである。
私はもちろん自分の名前でサーチをかけるような怖いことはしない。おかどちがいなことか肺腑を抉るようなことかどちらかしか書かれていないはずある。私は弱い人間であるから、どちらも読みたくない。
藤田さんはたいへん紳士的な方で、私がかなりディセンシーを欠いた感じの悪い書評をホームページで掲載したにもかかわらず、たいへんていねいな口調で私のホームページが面白かったこと、自分は私がラベルをはったような「ラカン派」ではなく、ラカンの治療技法の展開を臨床で試みていること、できれば会って「対論」したいこと、などを書き送って下さった。
ああ、このようなジェントルな方の著作に対して、私はなんと非礼な文章を書いてしまったのであろうか。自分の性格の悪さというのは、私が不快な想いをさせた相手の「怒り」によってよりもも、「寛容」によってよけい思い知らされる。
しかし、藤田さんの著作への悪態を収めた私の著作はすでに第二校を終え、いまさら「あれは差し替えね」というわけにもゆかない。礼節に対して非礼をもって報いる私はほんとうにひどい人である。というわけで私はここに満天下の読者のみなさまに対して、「藤田博史さんはとても紳士的でディセントな方です」ということを申し述べて、そのような方の書いたものにいやみな書評を書いた私の不明を恥じたいと思います。
岡真理さん(は読んでしまった)も、高橋哲哉さん(はまだ読んでないかもしれない)も気分を悪くしたら、ごめんなさい。あらかじめ謝っておきます。
それならもう批評なんかしなければいいのだが・・・それがそうもいかない。困った性分である。