5月31日

2000-05-31 mercredi

うっかり体調が悪いと書いたら、兄ちゃんから叱責メールが飛んできた。

「全部ほったらかして休む。これが責任あるひとの正しい態度でしょう。ぼくも先週、気が狂ったように忙しいなか四日間休みました。その間一度も会社に電話しなかった。でも、なーんにも問題なし。世間は自分で考えているほど自分を必要としていないのです。そんなこと知ってるだろ?」

兄ちゃんの言うとおりである。
世間は自分で考えているほど自分を必要としていない。
私がいなくなっても、当初はちょっと困る人もいるだろうけれど、まあ一週間くらいで、みんな私の不在という既成事実になじんで、それはそれ、ということで楽しく愉快にやってゆくだろう。
でも、それだからこそ、かえって「じゃあ、気楽に休もう」というわけにはゆかない。
というのは、私たちが仕事を休まないいちばん大きな理由は、自分が休んだときに「仕事に穴があいて、みんなに迷惑をかける」ことを避けたいからではなく、「休んでも穴があかないので、誰も迷惑しない」という悲痛な事実を直視したくないからである。
私もそのような事実を直視したくないので、なかなか休めないのである。
それほどまでに自己の存在基盤が脆弱なのか、おまえは、と兄ちゃんは嘆くかもしれない。
そーなんですよ。じつは。