4月24日

2000-04-24 lundi

土曜日はお稽古をふたつやったあと、ばたばたと六甲セミナーハウスへ。
上野先生とご一緒のフレッシュマン・キャンプ。
今年の総文一回生諸君と膝を突き合わせて語る貴重な機会である。
例年であれば、アルコール飲料を喫しつつ行うのであるが、今年からは全面禁酒となった。
去年、某学部のフレッシュマン・キャンプで学生たちが缶ビールを飲んだ。(そのこと自体はこっそりやればあまりとがめ立てる人はいない)
しかるに、そこを通りかかった教師たちに、学生たちがさらなる親交を求めて一献を差し上げたいと申し出たことからはなしはいささかややこしくなった。
教師たちも人の子、かわいい新入生から「冷たいのひとつどうです」と言われると、「じゃ、ちょっとだけね」となるのは勢いのしからしむるところである。
しかし、天網恢々(最近こればっかだな)そのような教育的配慮ゆえにやや遵法精神において問題のある行動が大学当局の知るところとなり、その席に加わった教員たちが全学教授会で「教育者として不適切な行動があった」と謝罪するという異例の事態となったのである。
私は正直に告白するが、これまで未成年の学生たちがアルコール飲料を喫しているのを咎めたことがない。私自身、喫煙は14歳から、お酒は19歳からのアディクトであるので、ひとに偉そうに意見できる立場ではないからである。自分のことを棚に上げて、ひとに意見するのはあまり気分のよいものではない。
しかし、ご禁制を破ったことが知れて、全学教授会で平伏させられたりするのはさらに気分がよくなさそうなので、今回はノン・アルコールのフレッシュマン・キャンプとなった。
キャンプのハイライトは上野先生が司会の「神戸女学院大学に、これだけはいわせてもらう」のお時間である。
20人の新入生たちに、「志願するときに、神戸女学院大学について、どんなイメージをもっていたか」「入学後2週間目での大学の印象はどうか」「大学に望む改善点は何か」をひとりずつ語ってもらう。
「歯に衣着せぬ」ヘビーな意見が続出した。
発言が集中したのは、職員がフレンドリーでないことと学生サービスの悪さに対してである。
システムが見えにくい、どういうルールで運営されているのか説明がない、情報の開示が不足、そして「初心者」のミスに対してシステムを弾力的に運用して救済するという配慮がない。
職員については、入学早々の学生をやたらに叱りつける点に不平が集中した。
期待して入学したのだが、いきなり冷水を浴びせられたようで、大学が嫌いになった、という発言を何人かが口にした。
これまでも一部セクションの「顧客サービス」の悪さについては繰り返し指摘されてきたが、ますます事態は悪化しているようである。
いくら教員がこれから高校回りで営業して顧客を開拓しても、せっかく入った学生たちが、地域や出身校で「神戸女学院て、めちゃ感じの悪い学校」と言って回れば、それでおしまいである。
良い評判が浸透するには何年も何十年もかかるが、悪評が伝播するには数ヶ月在れば足りる。
彼女たちの大学に対するロイヤルティの高さとプラス評価が、そのまま彼女たちの周囲の地域社会での「生きた広告塔」として機能する。当たり前のことである。
在学生に細やかな教育サービスが提供されていて、それは高額の学費に見合うだけの満足感を与えるものである、という「ユーザー」側の評価が定着していれば、受験生に対するパブリシティなんかほんとうは必要ないのである。
しかし、それでも彼女たちが「ま、大学なんて、どこだってこんなもんよ」というふうなあきらめ顔ではなく、本気で怒っていたのが私にはむしろ救いであった。
この怒りは貴重である。
「大学なんてつまらないから、どっかよそへ出よう」というのではなく、いまいるこの場所を快適で愉快な空間に作り変えたいという志向は貴重である。
そのような欲望を核としてはじめて大学は生命を得るのである。
彼女たちの言葉にきちんとこたえてゆかなければならないと私は思う。