4月19日

2000-04-19 mercredi

三回生の「顔見せコンパ」。11人いる。(萩尾望都)
リクエストにより、めにうは中華。鶏の唐揚げ(というより「辛揚げ」)、マーボー豆腐、颱風ビーフン、焼き餃子。ビール、チューハイ、ライチー酒、杏のお酒、などをみなさんごくごくと飲む。
ほんとは山本浩二画伯から「ミラノで買ってきたおいしいチーズがあるので・・・」というゴージャスなディナーへのお誘いがあったのである。画伯の新作レシピ「三種の香草入り」パスタなど、垂涎のめにうであったのだが、顔見せコンパが先約だったので、泣く泣く断念。
朝、三杉先生に会ったらにんまり笑って「おいしかったわよーーーー」と声を伸ばされてしまった。
うう、くやしい。
私は朝から仕込みとお掃除、そのあと講義をふたつかましてから、走って家に帰って、11人+るんちゃん分のご飯を作って、お酒を出して、みなさんが帰ったあとに全部片づけをしていたのだ。その間に難波江さんと三杉さんは、美味しいものを食べていたのね。
うう、くやしい。
次の「ミラノの生ハムを食べる会」には絶対行くぞ。
しかし、顔見せコンパは、ばしばし仕切る「姐さん」のおかげで、楽しく盛り上がった。みんな終わり頃はファーストネーム私たちで呼び合うようになっていた。
今回は自分の快楽よりも教育的配慮を優先したということでじっと耐えよう。

大学院の演習の第一回。ノルテとハーバーマスの「歴史家論争」を取り上げる。
最初の発表者はウッキー。先週指名された後さかんに「むずかしい・・・」と肩を落としていたけれど、やはり難物だったらしく、うまくまとめられない。
しかたがないので、途中で割って入って、「だめだよ、そんなんじゃ。何言ってんだか、ぜんぜん分かんない」とばりばり叱りつけて、「あのね、この話はね」と私がひきとってまとめているうちに、だんだん気分が出てきて、結局私がひとりでがあがあしゃべっているうちに終わってしまった。
あまりにうるさくしゃべりまくったせいで、盗聴生の飯田先生が「ああ、私も言いたいことたくさんあったのに、何も言う暇がなかった」と苦しがっておられた。
先生すみません。来週からちゃんと「みんなで議論する」ふつうのゼミにしますから。
これからベルナール=アンリ・レヴィの『危険な純粋さ』、藤岡信勝の『汚辱の近現代史』、ロベール・フォリッソンの Memoire en Defense としばらくは歴史修正主義と原理主義について生々しい論争を取り上げる予定。

そういえば昨日の朝日の夕刊にどこかの大学の先生がベルナール=アンリ・レヴィのサルトル論の新刊を書評していた。その中で、Benny Levy は「べニー・レヴィ」と表記しているのに、Bernard-Henri Levy のことは「アンリレヴィ」というふうに何度も書いているのがすごく気になった。
あのね、この人は「ベルナール=アンリ」が名前で「レヴィ」が姓なの。
それはジャン=ポール・サルトルを「ポールサルトル」と呼ぶようなものである。
夏目漱石だって「目漱石」って呼ばれたら返事してくれないんじゃないかしら。
とか言って、さっき川村先生と話していて、うっかり「川本先生」と言ったら、川村先生のめがねの奥が「きらり」と光った。(『グレートレース』のトニー・カーティスみたいに)
ひとのことはいえないね。

Memoire En Defense