4月2日

2000-04-02 dimanche
『現代思想のパフォーマンス』いよいよ刊行!
お待たせしました。出ましたよ。ついに。

『現代思想のパフォーマンス』(難波江和英/内田 樹・松柏社)¥3,300(ちょとたかい)
腰巻きに難波江さんいわく

「これはマニュアル本ではない。
ルネ・マグリットには『これはパイプではない』という有名な作品がある。
その前例にならって、本書の帯に『これはマニュアル本ではない』と書きつける。
この本を手に取り、なかを少しのぞいた読者が、『これはマニュアル本である』と思いこむ前に。」

かっこいいコピーだ。
でもこれは現代思想のマニュアル本としてもちゃんと使える。
マニュアル本でもあるし、思想書でもあるし、私と難波江さんのコール&レスポンスのアカペラ・コーラスでもあるし、山本浩二画伯の作品集として「鑑賞する」ことだってできる。
なんてお得なんだ。
さあ、諸君、ただちに書店に走れ。

3月31日から4月2日まで三日間、合気道の合宿。
場所はいつもの神鍋高原名色ホテル。もうここで6回目。
空気はきれいだし、体育館は近いし(宿の二階にある)、ご飯は美味しいし、お風呂は24時間入れるし、部屋は広いし、いくら騒いでもふだんは私たちだけしか宿泊者がいないので、騒ぎ放題である。(今回は県内の自転車部の高校生たちが土曜日から同宿。でも女学院合気道部の大迫力に気圧されてか影が薄い)
なにしろ総勢30人である。
91年の「湯の郷地獄の合宿」以来最高の参加者数。教職員だけで5人、東大気錬会OBがお二人、OGが二人(田口さんは北海道から有珠山の噴煙で遅れつつ飛行機で登場。札幌から神鍋高原まで1日の稽古のために!)
そして学生さんたちがざわざわ。
朝稽古で合気杖、昼間は合気道、夕方からは神道夢想流の杖という一日7時間稽古。
そのあいだに宴会。宴会が果てたあとになお昇段級審査の受審者たちは、廊下で有段者をつかまえて真夜中すぎまで「予想問題」を検討しつつばたばた稽古をしている。
タフな子たちである。
審査は無事全員合格して、全員わいわい騒ぎながらバスを揺らして帰っていった。

春の合宿は幹部交代の儀式がある。
合気道部第三期黄金時代を担った林佳奈さんが引退して、江口さやかさんが新主将。ついに第十代目である。
このところ歴代主将はさまざまな特技を持っている。
六代の宇野さんと七代の小国さんは凍り付くような「漫才」で宴会を盛り上げてくれた。
八代の小浜ちゃんは「麦チョコ空中捕食」を部の「無形文化財」として残してくれた。(今回も飯田先生はじめ部員諸君がこの伝統芸の習得と錬磨に多くの時間を割く心暖まる光景が見られた。)
九代の林さんはあの「佳奈ちゃんマジック」で、関係者するひとびとを「ふふふの佳奈ちゃんマジックワールド」にいざなう秘技を縦横に駆使し、その魔力の絶大な効果にこの一年間、部員一同はただ驚嘆するのみであった。感動のあまり内田は今後合気道部の稽古目標のひとつに「魔法の習得」という一項を新たに加えたほどである。(これはほんとの話)
十代主将の江口 "パズー" さやかさんの特技は人も知る「おやじギャグ十連発」である。
つとに指摘されているように、合気道部は顧問の内田が本質において「おばさん」であり、助教の松田先生も(実は)「おばさん」なので、ジェンダー・バランスの当然の帰結として部員全員の「おじさん化」がはげしく進行している。
ビールをくいくいとあおりつつ「ぷはー、こりゃたまらんわ」とひたいを叩く、歯ブラシを口につっこんだまま廊下でわざの指導をする、湯上がりジャージー姿の首にタオルを巻いて登場するなど、年ごろの乙女たちとは思えぬ所業のかずかずに、今年度からはこの部員たちがくちぐちに「おやじギャグ」をかましまくる姿が加わることになるだろう。
今回は7名が初段になった。
新入生が道場見学に来る頃は、みんな黒帯。
ずいぶんと層が厚くなった。
これで新入部員が10人も入った日にはどうなるのであろう。
もう道場に入りきれない。
早急に大学の旧体育館を改築して、武道場を造っていただきたいものである。
贅沢はいわない。
ほんの百畳ほどの畳の道場に、ほんの百畳ほどの板の間がついているだけでいいのです。

多田先生によれば、「道場があるといいな」と強く念じていると、必ず思いは実現するそうである。現に多田先生はそうやって月窓寺道場を建てられたのである。
先生が庭でお風呂をつくっていると(すごいね)通りかかった散歩中のお坊さんが、不審におもって「何しているのです」と訊ねた。
「明日までにお風呂を建てるのです」と多田先生はお答えになった。
「なんでまた、あしたまでに」
「いや、明日からイタリアへいくので」
「なんでまたイタリアへ」
「合気道を教えに」
「なに、合気道」
というふうにとんとんと話が進んで、そのお坊さんが、「では私にご指南下さい。つきましては、うちの寺の庭にちょうどプレハブが一軒空いておりますので、それを道場にお使いになったらいかがです」というのが今日のあの「日本で一番立派な」といわれる月窓寺道場の始まりである。
かくいう私も必死に「道場がほしいほしい」と念じていたら、そこを通りかかった松田先生が「なにをしているのです」とお尋ねになるので「いや合気道を」「何、合気道。実は私も前から合気道がやりたくて・・・」というきっかけでいつのまにか岡田山ロッジの道場は出来たのである。
念じれば実現する。部員諸君は日夜はげしく祈るように。

三日間合気道をしてご飯をたべて宴会をしてお風呂にはいって寝ているだけという知的負荷のきわめて少ない生活をしていたので、家へ帰っても仕事にならない。リハビリのために貴志祐介の『ISOLA』を読む。
『黒い家』も怖かったが、これもぞくぞくしながら楽しく読んだ。
ところがなんと時代は1995年震災直後の西宮。主な舞台は武庫川沿いのなんとか学院高校と、「関西学院大学から東に三キロ」離れたところにある「西宮大学総合人間科学部」。
うーむ、これは。
そして主人公の美女とからむ謎の助教授は「身長180センチ、長髪、彫りの深い顔立ち、白衣着用、30代後半の認知心理学者」。お、こ、これってもしかして・・・
彼の身にいったい何が起こるのであろう。
というふうになかなか楽しめる一冊でした。神戸女学院大学の人間科学部の学生諸君は必読だ。

法政大学の鈴木晶先生のお洒落でおちゃめなホームページ Sho'z Bar に遊びに行く。
先生の「極私的リンク集」に「抱腹絶倒」と本ホームページが過分のお言葉とともにご紹介頂いていた。(それも「柄谷行人のホームページ」の次に。おっとと)
鈴木先生は「バレエの伝道師」、私は「武道の伝道師」とちょっと領域はずれるけれど、大学時代はふたりともバンドマン、卒業すると翻訳会社を創業、ハロルド・シェクター大好き(鈴木先生は私の愛読書『体内の蛇』の訳者そのひとなのだ)というあたりに「他人とは思えない」ものを感じる。
『精神分析入門』の読書会をしているという先日の記事を読まれて、鈴木先生は最新刊のご高著『精神分析入門を読む』を送って下さった。(鈴木先生ありがとうございました。でもその本ちゃんと自分で買ったのもってるんです。先生から頂いたものは愛蔵版として書棚に飾らせて頂きます。)

野崎 "師匠" 次郎先生もホームページを開設された。
これからばりばりテクストを書き込んでゆくご予定らしい。
現在では入手困難な野崎先生のフランス思想関係のレアアイテム論文も読めるぞ。
みんなで遊びに行きましょう。