2月10日

2000-02-10 jeudi

学科教授会があって、またまた学科再編について激論がかわされた。
諸先生、それぞれの視点から学科の、ひいては大学全体の将来を見通しての発言であるはずだが、なかなかまとまらない。
この数週間いろいろと議論を重ねてきて、議論を先に進めるのを妨害するファクターが二種類あることが分かった。

(1)何が起きているのかぜんぜん分かっていない人。
(2)何が起きているかは分かっているが、それを利己的な仕方で利用しようとする人。

(1)の人は組織もあらゆる生物と同様、「変化すること」を止めると死ぬ、という生物学的真理が分かっていない。
そういう基本的なことが分かっていないので、この人は「改革」について論じている場面で「議論そのものをやめろ」というかたちでしか議論にかかわってこない。すごくうるさくて、ほんとに迷惑である。
(2)の人は、「変化すること」の必要性は受け容れるが、それはぜひ「自分に」有利な仕方で展開してほしいと思っている。この人たちの言うことは一見するとなかなかクレヴァーであるが、やはり基本的なことが分かっていないので、合意形成には成功しない。
このスマートな人たちが忘れているのは、あらゆる集団において「自分がほしいものは、まずそれを他人に与えることによってしか手に入らない」という人類学的真理である。
何かを安定的なしかたで手に入れようと思ったら、まずそれを「贈与する」しかない。
それはレヴィ=ストロースなんか読まなくても、少しじっくり人間の行動を観察していれば誰にでも分かるはずである。
集団の成員たちが限定的な利益をゼロサム的に奪い合っていれば集団は必ず崩壊する。
何か得ようと望むものは、まず自分以外のひとにそれを贈らなければならない。そして、集団が健全に機能している限り、それは最初の贈り手のもとに必ず戻ってくる。
集団を成立させているのは「変化」であり、もっと身も蓋もなく言えば「循環」である。
大事なことは、まず「パス」を出すということである。
この人類学的真理を直観的に理解している人と、理解できない人がいる。
どうしてこんな簡単なことを理解できない人がいるのか、私にはうまく理解できない。