1月2日

2000-01-02 dimanche

東京に行く。八重洲富士屋ホテルに投宿。というのは、このホテルのバーで高校のクラスの新年会をやるからである。酔いつぶれてもエレベーターで部屋まで帰れる。
シンガポールから来た「信ちゃん」と私のつごうに合わせて急遽召集したので、ふつうに家庭を大事にしているふつうのクラスメートは誰も来ない。来たのは、「信ちゃん」のほかに、「かっちゃん」、「あきら」、「なお」、「とおる」。みんな「家庭の幸福は諸悪の根源」というふるい言葉をいまだに信じているやくざなおじさんたちである。
私はふだん「大学」と「家」を往き来するだけの世間知らずの「主夫」なので、日本経済の先端にいるおじさんたちの話にいちいちびっくり。
この新年会で聞いたびっくり話。

その一:「あきら」は大手化学会社を「早期退職」して、いま「隠居」。なんと、彼の会社では管理職の半分がリストラされたそうである。
「でもね、辞められた方は運がいい方なんだ。残った連中は、まだローンの払いが残っているとか、子供が小さいとかいう理由で辞めるに辞められないんだよ」
つまり「難破船」からたっぷり退職金をいただいて抜けだせたひとはむしろラッキーで、残った連中は、うっかりすると船もろともに沈没。
そういう「早期退職」おじさんがいま世間にはごろごろしているらしい。とりあえず生活には困らないけれど、ひまなのでビデオ屋の店員でもやろうかしらと思っても奥さんが「世間体が悪い」と言って何もさせてくれないので、座敷牢で飼い殺しになっているおじさんはけっこう多いそうである。哀号。

その二:外資系企業の女性キャリアは「収賄」に対してきわめてガードが甘い。
女性であるがゆえに「不当に」アンダーレイトされてきた、という原体験のゆえにか、彼女たちは「不当に」オーヴァーレイトされることに対してきわめて寛大である。
「ちょっとした贈り物」や「ちょっとした役得」を「職務上の権限に付随するリベート」というふうには考えずに、「自分の個人的能力に対する評価のしるし」というふうに理解するので、抵抗なしに受け取ってしまっていろいろトラブルが絶えないそうである。うーむ。

その三:国歌を換えよう
国旗国歌の法制化については「日の丸はよいが、『君が代』はよくない」ということで衆議一決。2002年のワールド・カップまでに国歌を制定しなおしたほうがよいということに決した。条件は「みんな知ってて、サッカーに勝てそうな元気の出る曲」。
私が提案したのは『軍艦マーチ』。これは元気が出るし、なによりも『秋刀魚の味』のテーマ曲であるというのが推薦理由。しかし「守るも攻むるもくろがねの」という歌詞が軍国主義的であるという理由で却下。「じゃあ、インストだけ」。「インストだけだといよいよパチンコ屋」という理由で却下。
かっちゃんが「東京行進曲」を提案。いやそれより「東京ラプソディー」のほうがいいという反対意見あり。中山晋平で行こうということで「カチューシャの歌」「ゴンドラの歌」などが出る。いやいや日本を代表する作曲家といえば古賀政男だから「影を慕いて」との説もあった。小学生たちがうつむき加減の暗い顔で「まーぼろーしのー」と歌う声が卒業式の講堂にこだまするというのはかなりシュールな光景である。歌い上げる曲想のものがよいということで三橋美智也の「わーらーにまみれてよ」も候補にのぼったが、最終的には「青い山脈」に決したような気がする(けれど、かなり酔っていたので定かでない。)

そのあと某医大の偉い先生であるかっちゃんとさらにワインなどを飲みつつありうべき大学教育について悲憤慷慨。高校一年生のときからふたりでいつも日本の将来を嘆いていたが、35年たっても、あまり日本はよくなっていないらしい。