かなりの速度でいま世の中が変動しつつある。変化にキャッチアップするのに一苦労する。アメリカのニュースを見るだけでも頭がくらくらしてくる。エプスタイン・ファイルはアメリカのエリートたちが「国際的な悪のネットワーク」を形成していたことを暴露するのか、トランプはイランを本気で攻撃するのか、グリーンランドやカナダを併合する気なのか、大統領をもう1期やる気なのか。わからない。
前にアメリカの政治学者が、トランプの外交上の圧倒的なアドバンテージは「次にどんな行動を取るか誰にも予測できないことにある」と書いていた。「トランプ自身、自分が次に何をするのか予測できていないのだから余人に知れるはずがない」と続いていた。わかるのは、私たちが暮らすこの世界の秩序がどうやら「崖っぷち」にあるらしいということである。
日本も「崖っぷち」であることに変わりはない。自民党もこれほど勝つとは思っていなかったはずである。だから、この圧勝が意味するのは「政権の安定」であるよりむしろ焦燥感だろうと私は思う。過去の議席数の推移から推理すれば、これほどの多数の議席を占有する機会は当分訪れないだろう。それに、外交でも内政でも、この後、高市政権の政策が次々と成功して、持率が上がり続けることは期待し難い。それに、今回自民党に投票した人たちのうち1000万票は毎回投票先を変えることで政局の「鍵を握る」ことを楽しむ忠誠心の乏しい浮動層である。それなら「国論を二分するような重大な政策」は今すぐに撤回不能な仕方で実行するしかない。
政権はこれから国民の間に「高市推し」機運が残存しているうちに一気に改憲の発議と国民投票まで走り抜けるだろうと私は思う。
国民的規模の護憲運動が組織されるより前に国民投票まで持ち込めば、九条二項の廃止、自衛隊の明記、緊急事態条項制定に国民の過半は賛成する可能性が高い。核武装にさえ賛成するかも知れない。そして、日本が「別の国」になってしまった後になって自分たちが何に賛成票を投じたのか気づくのである。気鬱な話だが。
(AERA 2月25日)
(2026-08-30 11:13)