憲法の危機

2026-03-29 dimanche

 日米首脳会談では自衛艦のホルムズ海峡派遣というトランプ大統領の要請に対して、日本政府は果たしては「ノー」と言ったのか「イエス」と言ったのか、わからなくなってきた。
これまで日本政府は、集団的自衛権発動は「法的に困難」であり、「日本の法律の範囲内でできることとできないことがある」という言い方をしてきた。安全保障関連法案の国会審議において、当時の安倍首相は、他国防衛を目的とする参戦や自衛のための「必要最小限度」を超えた武力行使は「改憲しないとできない」と語っていた。
だが、「改憲しないとできない」という言明をそのままの意味で解してはならない。「改憲しないとできない」という言明は「だから、改憲しなければならない」という言明に論理的には続くのである。
 今回の日米首脳会談では、日本政府のこれまでの国会答弁がトランプの自衛隊派遣要請を断る法的根拠になったとされている。だが、日本政府はこれを「外交的成果」として誇ることをためらっている。というのは、これが「成果」なら、「憲法九条が日本を救った」という話になってしまうからである。それではこの後改憲を正当化する根拠がなくなる。
だから、「改憲しないとできないことがある」という言明を通じて高市首相は「九条があるせいで米軍の支援ができない」と米側に伝えたのだと私は思う。憲法九条こそが「日米共同の敵である」と。
 「だから米国からも『改憲しろ』という強い外圧をかけてください。改憲したらすぐに米軍の支援に駆け付けますから」と首相は約束したのだと思う。事実、首脳会談の直後に、トランプ大統領は「日本は支援してくれる」と述べ、ウォルツ米国連大使は「日本の首相は自衛艦派遣を約束した」と述べている。
 日米首脳間で、首相の発言について理解の食い違いがあったという解釈を私は採らない。日米合意を高市首相は曖昧に表現し、ホワイトハウスはあからさまに表現した。ただ、それだけの違いだと思う。
 自民党はこれから一気に改憲に前のめりになるはずである。米国がバックについてくれたのだから、もう怖いものはない。(AERA 3月25日)