イーロン・マスク率いる「政府効率化省(DOGE)」による連邦政府職員の大量解雇が続いている。あちこちで政府機能の停滞が報告されているが、マスクは政府機能の不全などはあまり気にせずにこのまま「大ナタ振るい」を続けると私は思っている。政府効率化の隠されたターゲットはワシントンの役人たちではなく、130万人の軍人たちだからである。
「無駄飯食いは首だ」というトランプ政権の大胆さに人々は今喝采を送っている。それがさまざまな領域に広がり、ある日指先が自分に向けられ「お前も馘だ」と言われた時に、彼らはこれに反論するロジックを自分が持っていないことに気がつく。そういうものである。トランプはいずれ米軍人たちに向かって、そう告げるはずである。
アメリカはAI軍拡で中国に遅れをとっている。AIへの資源集中を妨害しているのは既得権益にしがみつく職業軍人たちと兵器産業である。ホワイトハウスは彼らを養うコストをできればAI開発に振り向けたい。兵器産業の不良在庫は日本政府が国民生活を犠牲にして「爆買い」してくれるからなんとかなるが、軍人たちは、「これからの戦争はドローンとロボットをAIがコントロールして行うことになるからもう君たちは要らないのだ」と言っても、簡単には引き下がってくれないだろう。とりあえずちょっとずつレイオフしてゆくしかない。その「地ならし」としてマスクはまず連邦職員の削減から始めたのである。CIAもFBIも「効率化」の対象である。これで「効率化に聖域はない」ことは全米に周知された。だとしたら次は軍人がリストの上位に来ることは想像に難くない。
今日本の南西諸島で行われているのは、アメリカ軍から自衛隊への「戦争のアウトソーシング」である。これはいずれ在日米軍基地に配備するだけの兵員が不足するので「あとはよろしく」という事態の前ぶれのように私には見える。
(信濃毎日新聞2月21日)
(2025-03-21 08:06)