ペーパーフルな時代

2025-02-22 samedi

 書斎の床を埋め尽くす書物や書類を1時間ほどかけて片づけた。処分できたのは雑誌などごく一部で、大半の書物は横移動しただけである。それでも歩くためのスペースだけは確保できた。
 これらの書物のうち自分で買ったものはたぶん3割くらい。あとは献本である。名も知らぬ人から、私にはさっぱり関心のない領域の自費出版本を送られるとほんとうに当惑する。読む時間はないし、捨てるわけにもゆかない。書棚に空きがあれば並べておいてあげたいのだけれど、それもかなわない。結局床に積み上げられることになる。何年か経って「これはたぶん一生読まないな」と確信が持てると道場の廊下に作った「ご自由にお持ちください」コーナーに配架する。
 8割方は無事に引き取られる。残った2割は申し訳ないが「古新聞・古雑誌」に認定されて廃棄される。合掌。
「これからはペーパーレスの時代だ」とさかんに言われた時期があった。でも、最近誰も言わなくなった。ペーパーレスは不可能だということに気づいたのだろうか。
 たしかにペーパーレスになれば書棚問題は解決する。その日を心待ちにしていたのだが、相変わらず書斎は紙で埋め尽くされている。本のゲラも「データでいいです」と言うのだが、律儀に紙ゲを送って来る。ゲラが三冊分もたまると一度に持てないくらい重い。
 電子書籍はいろいろと難点があるけれども、とにかく所蔵するのに空間を要さない点が卓越している。探す手間も要らない。検索すれば必ずみつかる。書斎にあるはずの書物ははしごを架けても床を這いまわってもみつからない。結局ネットで買うことになる。そしてそれが届いた頃に探していた本はみつかるのである。時間と手間の節約という点では圧倒的に電子書籍がすぐれている。でも、電子書籍で献本してくれる人はいない。誰かそういうサービスを始めてくれないだろうか。