この原稿が年明け最初になる。年頭なので2025年はどんな年になるのか予測してみたい。毎年予測しているが、だいたい外れる。「そんなことが起きるとは思ってもいなかったことが起きる」からである。でも、みんな私と同じように驚いているので、「お前の予測は外れたな」というような個別的な嫌味を言われたりしない。恥をかくのは「必ずこういうことが起きる」と予測したことが起きなかった場合だけである。
とはいえ、せっかく紙数を頂いているのだから、恥を覚悟で、「そんなことが起きると思っている人があまりいないこと」を列挙してみたい。
その1.アメリカでいくつかの州が連邦から離脱する。テキサスとカリフォルニアでは独立運動がもう始まっていることは前にも書いた。合衆国憲法には州の連邦からの離脱についての規定はないが、論理的には州議会と州民投票で過半数を得れば連邦からの離脱は可能なはずである(同じ条件で連邦への加盟が可能なのだから)。連邦政府と州政府の間でどんなフリクションが起るか想像は難しい。
その2。イスラエルのネタニヤフ首相が失脚する。ガザでの虐殺に対する国内外の批判が高まり、イスラエル国民であることそれ自体が海外でのリスクになる状態に国民が耐えきれず、ネタニヤフを引きずり下ろし、ガザでの停戦協定が結ばれる。
その3。習近平、プーチン、金正恩のうちの誰かが舞台から消える。独裁者を退場させるためには軍と警察と政治家を結ぶ地下組織が組織されている必要があるが、その兆候はこの三国ではまったく見ることができない。これを「まったくその兆候がない」と見るか「地下工作が完璧に隠蔽されている」と見るかで、次に起きることが正反対になる。
その4。自浄能力を失った自民党が失権する。自浄能力とは「この組織はいかなる目的を実現するために存在するのか」という歴史的使命についての合意が成員間に成立している組織でしか働かない。自民党はもう「政権維持」以外に存在理由がないので、「自浄」も「諫言」も「公益通報」も起こらない。壊死する他ない。
一つくらい当たって欲しい。
(AERA1月8日)
(2025-01-15 15:03)