統一教会というタブー

2022-07-21 jeudi

信濃毎日の先週号に寄稿したものをブログに採録しておく。
 
 安倍元首相の暗殺事件を契機に、久しぶりに「統一教会」という文字列がネットや新聞紙面を賑わすことになった。当初大手メディアは政権に配慮してか、この固有名詞をひた隠しにしてきた。なぜこの銃撃事件とカルトの間に関係があるのか、それを説明することが政権にとって痛手になることが予測されたからである。しかし、隠し切れなかった。
 自民党にとって頭の痛い問題は、統一教会の広報誌に登場したり、教会や関連団体のイベントに参加したりしていた所属議員たちが統一教会の危険性をどれくらい認識していたのか、それを問われた場合である。
「危険な団体だとは知らなかった。世界平和と家族のたいせつさを訴える穏健な団体だったと思っていた」というのがさしあたりの「模範回答」だろうが、これは端的に嘘である。全国霊感商法対策弁護士連絡会によれば、統一教会は過去30年に国内で霊感商法による被害件数3万4537件、被害総額1237億円という事件の当事者である。連絡会は議員たちにこの事実を示して、統一教会の活動に加担し、「国会議員も関与している合法的な活動」という印象を与えることは、被害者を傷つけるばかりか、新たな被害者を生み出すことにもなるので、関係を断つよう繰り返し懇請を続けてきた。その忠告を無視し、あえて統一教会との関係を続けてきた以上、「危険な団体だとは知らなかった」という言い訳は通らない。もしほんとうにそうなら、世事に疎いばかりか、ことの当否についての判断力がこれほど低い人間に国政を議す資格はない。
「危険なカルトだとは知っていたが、自分の政治活動のためにその資金力・動員力を利用してきた」というのがおおかたの本音だろうが、それは口が裂けても言えない。その「資金力」なるものはまさに「被害総額1237億円」を原資とするものだからである。