佐藤学先生の台湾情報第三報

2014-03-27 jeudi

台湾滞在中の佐藤学先生から速報の第三報が届きましたので、お伝えします。Twitterだと読みにくいので、ブログにあげておきました。できるだけ多くの方に読んで頂きたいと思います。

台湾情報第三報(佐藤学)

一昨日の「台湾情報第2報」は、ブログ発信のアクセス数で日本一になりました。また、その文章は直ちに翻訳されて台湾でもツィターで広がり、学生たちにも共有されています。アジアの民主化を希求する人々を繋ぐ役割をはたせたことを喜んでいます。
行政院の学生たちへの機動隊による暴力以後の情報を伝えます。26日の昨日は、朝から機動隊の学生に対する暴力への批判が強まりました。立法院を占拠している学生たちは「学生の暴動」ではなく「国家の暴力」であると訴えました。学生たちはフェイスブックの顔写真の部分を黒く塗って、機動隊の暴力の事実を伝えあい、その全貌を明らかにする作業を続けています。ところが、このフェイスブックの情報が何者かによって次々に消去される暴挙が起こっています。
立法院を占拠している学生たちの冷静で賢明な闘いは市民の支持を獲得しています。先の「台湾情報」で、学生運動が53人の学長の支持表明を獲得していること、世論調査で83%の人々が、立法院を占拠する学生たちの対話要求に馬英九が応じるべきだと回答していることをお知らせしました。昨日の世論調査では、70%の人々が学生運動を支持すると回答しています。さらに、中国との自由経済協定立法の前に中国政府と馬英九との「秘密交渉」を許さないために政府間の交渉を公開する管理法を学生たちは提案しているのですが、この提案について75%の人々が支持すると回答しています。
これら広範な支持を背景として、学生運動は一定の勝利を収めつつあります。一つは、行政院への突入を指導した責任者として逮捕された学生が無罪として釈放されました。学生たちの要求する馬英九との「対談」については、馬英九はこの要求を無視できなくなり、総統府での「会話」に応じると返答しました。また警察は、機動隊の暴力行為の事実を認めて謝罪しました。さらに民進党は、立法院の委員会で成立した自由経済法案がわずか30秒の国民党議員内部の一方的決議であったことから、「違法」であると言明しました。これらは学生運動の成果です。
しかし、本格的闘いはこれからです。立法院(国会)は国民党が多数を占めているので、立法院を占拠している学生たちが排除されれば、自由経済協定は簡単に可決されてしまいます。そうなると中国の巨大な資本が台湾を買い上げてしまうでしょう。馬英九は総統府で「会話」に応じると学生に伝えましたが、学生たちが求めているのは公開の場における「対話」です。学生たちは馬英九の承認した「会話」には応じないと返答しています。賢明な判断です。
学生たちの冷静沈着で賢明な闘いは、大学生たちのほぼ全員の支持と大多数の参加、大多数の市民の支持を獲得しています。名物の夜市の屋台が立法院のまわりに集まって、闘う学生たちに無料で食事を提供しています。昨日は、タクシー協会が学生支持を表明し、タクシーのデモを行いました。ほとんどの国民が「学生たちを尊敬する」「学生たちの勇気に感謝する」と語っています。私は台北教育大学大学院で講演と集中講義を行っているのですが、ほぼすべての教授が学生運動を支援し、「素晴らしい学生たちだ」「学生たちを尊敬する」「学生たちに感謝する」と語っています。立ち上がったすべての学生たちは、私から見ても感動的なほど素晴らしい学生たちです。私も学生の正義と勇気と民主主義と祖国を愛する姿に心からの敬意を表明しています。
大学の動きですが、台湾全土の大学で学生たちが立ち上がりました。ほとんどの学長、教授たちは学生たちを支持しています。それに対して、国家教育部は緊急に全国の学長を集め、教授が学生を扇動しないよう忠告し、学生運動の抑圧策を講じています。しかし、ほとんどの学長と教授たちの学生運動の支持は崩れることはないと思われます。
テレビと新聞のニュース報道は毎日24時間、学生運動の情報を伝えていますが、情報は混乱していますし、真実を伝えていないので、学生たちはブログとフェイスブックのネット通信で事実と真実を見極めています。しかし、ニュースを通じて愉快な話題が台湾市民の間で話題になっています。一つは、「太陽餅」(台中市の名物)の話題です。行政院の副秘書官が占拠した学生の[暴力]の証拠として「私の部屋の餅が一つ食べられた」とテレビで語った(笑)のですが、翌日、匿名の市民が「太陽餅」150箱(1500個)を贈ったのです。1990年の学生運動が「野百合革命」と呼ばれたのに対して、今回の学生運動は「太陽花(ひまわり)革命」と呼ばれています。「太陽餅」は「太陽花革命」のシンボルになりました。副秘書官はテレビで「贈り物には感謝する」というピンボケの応答をして笑ってしまいましたが、受け取りは拒否し立法院に送ったものだから、学生運動の学生たちは「ありがとう!」と笑顔で叫んで食べました。(太陽餅は民主餅として大人気になり、売りきれ。)
そのほかに、いろいろな話題がニュースで報道されています。立法院の院長はもと台湾大学の政治学者ですが、これまでの政治学者としての格好いい発言に対して今回の政治対応はひどいものでした。それを憤った学生たちは院長のリコール署名を始めましたが、その書名に彼の娘が署名して話題になっています。
まだまだ闘いは続きます。今日のNJKテレビは「立法院は民主主義の象徴であるため、占拠している学生の排除は難しいと考えられ、まだ解決の見通しはたっていません」という趣旨の報道をしていましたが、まったくまちがっています。立法院の学生占拠が続いているのは、国民の大多数が学生たちを支持しているからです。そして、学生たちの勇気ある闘いが敗北すれば、台湾の民主主義と独立が破壊されてしまうからです。
台湾の学生たちは今月30日に、世界各国の留学生たちが連帯してデモを行い、報道の虚偽を批判して真実を伝える行動を行います。日本の留学生も立ち上がるでしょう。ぜひ彼らと対話し、台湾と日本の民主主義者の連帯を築き上げましょう。
最後に、何度も繰り返しますが、祖国と民主主義のために立ち上がった台湾の学生たちの思慮深い勇気ある闘いを尊敬し、支持します。