毎日新聞にこんな記事が出ていた。
自民党の石破茂幹事長は29日付の自身のブログで、国家機密を漏えいした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法案に反対し、国会周辺で行われている市民のデモについて「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」と批判した。国会周辺では連日、市民団体が特定秘密保護法案に反対するデモを行っているが、これを「テロ行為」と同列視する内容で反発を招くのは必至だ。石破氏はブログで「今も議員会館の外では『特定機密保護法絶対阻止!』を叫ぶ大音量が鳴り響いている。どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはない」と指摘。「主義主張を実現したければ、理解者を一人でも増やし支持の輪を広げるべきだ」と主張した。(毎日新聞12月1日)
重要な発言である。
彼の党が今採択しようとしている法案には「特定有害行為」の項で「テロリズム」をこう規定しているからだ。
「テロリズム(政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう)」(第12条)
森担当相は国会答弁でこの条文の解釈について、最初の「又は」は「かつ」という意味であり、「政治上」から「殺傷し」までを一つ続きで読むという珍妙な答弁を行った。
しかし、この条文の日本語は、誰が読んでも、「強要」と「殺傷」と「破壊」という三つの行為が「テロリズム」に認定されているという以外に解釈のしようがない。
そして、現に幹事長自身、担当相の解釈を退けて、「政治上の主義主張に基づき、国家もしくは他人にこれを強要」しようとしている国会周辺デモは「テロ行為とその本質においてあまり変わらない」と断言しているのである。
幹事長の解釈に従えば、すべての反政府的な言論活動や街頭行動は「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」しようとするものである以上、「テロリズム」と「その本質においてあまり変わらないもの」とされる。
「テロリズム」は処罰されるが、「テロリズムとその本質においてあまり変わらないもの」は「テロリズム」ではないので原理的に処罰の対象にならないと信じるほどナイーブな人は今の日本には(読売新聞の論説委員以外には)たぶんいないはずである。
このブログでの幹事長発言は公人が不特定多数の読者を想定して発信したものである以上、安倍政権が考える「テロリズム」の定義をこれまでになく明瞭にしたものと私は「評価」したい。
石破幹事長によれば、私が今書いているこのような文章も、政府要人のある発言についての解釈を「政治上の主義主張に基づき他人にこれを強要」しようとして書かれているので「テロリズム」であるいう解釈に開かれているということになる。
私自身はこれらの言葉は「強要」ではなく「説得」のつもりでいるが、「強要」か「説得」かを判断するのは私ではなく、「国家若しくは他人」である。
特定秘密保護法案では、秘密の漏洩と開示について議論が集中しているが、このように法案文言に滑り込まされた「普通名詞」の定義のうちにこそこの法案の本質が露呈している。
(2013-12-01 09:32)