ハンキョレ新聞のインタビュー

2012-08-20 lundi

8月15日から17日までソウルに滞在した。
『街場の教育論』と『先生はえらい』と『日本辺境論』が続けて出版されたので、そのパブリシティというか、「ウチダ本読者のみなさま」たちとの交流の集いが持たれたのである。
新聞の取材が3件、講演が2回、セッションが1回と、二泊三日の滞在にしてはハードなつめつめ日程であったけれど、たいへんに愉快で、かつ生産的な出会いだった。
その詳細については、また後日レポートするつもりであるが、とりあえず最初の日にハンキョレ新聞に載ったインタビュー記事を釜山大学の朴東燮先生が翻訳してくださったので、それを貼り付けておく。
この記事は8月17日に掲載された(朴先生、お手数かけました。ありがとうございました)。


このままだと韓国も日本のように教育崩壊

日本、受験競争が激しくなり、学校市場化になりつつ
学びから逃走する若い世代 下流志向予測
目的のない真の学びのための師を求めるべし

スーパーとかで買い物することと同様に教育を行う韓国でも近いうちに学力低下および教育崩壊が起こるでしょう。そういう現象が起こる前に
真の学びのための師を見つけないといけないと思います。

日本を代表する知識人の一人である 内田樹(62:神戸女学院大学名誉教授 )は韓国の教育現実に対してこのように警告した。
内田氏の著書《先生は偉い》(韓国語のタイトルは《師はいる》)の韓国語の翻訳出版の時期にあわせて15日韓国を訪問した内田氏は、30年前に「4時間睡眠で頑張った人は合格する。5時間も寝てる奴は落ちる。」という言葉が日本ではやり、恐ろしい受験戦争を経験した日本はそれ以後、学校が教育を販売する市場になってしまい、学力低下が、社会的な問題になっているといい、日本と同様に高校の入学段階から深刻な受験戦争に生徒たちをおいやっている韓国も限界点に到達すると同じ危機が訪れるだろうと述べた。

内田氏は構造的に弱者をつくりあげる社会で学びと労働から逃走する若い世代の出現を鋭く分析した《下流志向》、日本は中心になろうとする辺境という主張を示した《日本辺境論》などの本を執筆し、現在日本を体表する知性として評価されている。

内田氏は、日本はすでに教育の市場化で教育が崩壊しつつあると述べた。“学校は教育商品を販売する市場になってしまい、勉強のために注込む努力は貨幣に、貨幣で買う教育商品の価値は[高い年収・高い威信・一流大学の進学]などの目的を達成できるかどうかによって評価される”と指摘した彼は、そのうち目的ははっきりしなし教育商品と教育者からは背をむけるというような現象が
エスカレートー化していき、結局は教育の荒廃化につながってしまうのであろうとと指摘した。

内田氏は、さらに日本政府の教育政策に対しても批判的な観点を述べた。“日本の文部省は‘グロバール人材の育成’をスローガンを掲げたが、‘競争を通じてお金をたくさん稼げる’
グロバール人材は実は今の学校教育システムでは効率よく養成できません。結局、文部省は学校の市場化を強要しているだけです。”


内田氏は、‘教育の市場化’という現象を克服するためには‘若者たちが師はどこかにいると信じ、学ぼうとする気持ちを持つことが大切であると述べた。

氏がいう本当の学びというのはあくまでも学ぶ前と学んだあとかわっていくプロセスであり、手段では決してない。

今度韓国語で翻訳出版された〔師はいる〕でも内田氏は、‘師と教育は既製品ではない、学ぼうとする気持ちさえあれば師はどこにもいる’というメッセジーを若者たちに伝えている。

30年間大学の教師としての経験をもち、昨年退官した内田氏は神戸市である種の学びの共同体である凱風館を開いて運営している。‘暖かい風が吹いてくる’という意味を持つこの場では6歳の子どもから大人までさまざまな人々が合気道を学び、人文学の講座に参加し、目的なしの学びを実践している。

内田氏は“教育が荒廃化するにつれて制度圏の外で学びを回復させようとする動きがあちことで起こっていると述べた。