今月1日に大阪市の公募区長に就任した榊正文・淀川区長(44)が個人のツイッターで、自身を批判した相手に「アホ」「暇人」などと発言していたことがわかった。自身もツイッター上で過激な発言を繰り返している橋下徹市長は9日の記者会見で、「(区長は)公選職でなく、僕と同じやり方はできない。有権者へのアホとかバカという言葉遣いは行政職としては許されない」と述べ、処分を検討する方針を示した。
榊区長は人材派遣会社役員から転身。今月7日にツイッター上で、「これまでの暴言について明確に謝罪してからが初めてスタートライン」と区長就任後の挑発的な発言を批判され、「アホか、相当な暇人やな」と発言していた。
榊区長は「問題と言われるなら問題かもしれない。ただ私的なツイッターであり、特定の人にアホと言ったのではない。 (ツイッターには)変な人や行儀の善くない人たちがいっぱい来る」と話した。(毎日新聞、8月9日)
少し前にはこんな事件もあった。
大阪市浪速区の公募区長として8月に就任予定の経営コンサルタント会社社長、玉置賢司氏(45)がインターネットの短文投稿サイト「ツイッター」に「菅直人(前首相)を殴る」などと書き込んでいたことが分かった。玉置氏は「東日本大震災への政府の対応が遅れていることにいら立って書いた。暴力やテロを肯定しているようで、社会人として言葉の選択が誤っていた」と陳謝した。
玉置氏は昨年4月9日、ツイッターに「近頃の日本は右翼があかん政治家を殺したりせえへんようになった。今の時代に殺す必要は無いのかもしれんけど、菅直人は正直殴ったらなあかんと思っている。SPの人には悪いけど私の前に来たら必ず殴ります。たとえ懲役に行くことになったとしても。覚悟しとけよ。ボンクラ政治家よ!」と書き込んだ。市が公募区長の就任予定者を発表した21日、投稿内容が不適切だと考えてツイッターのアカウントを削除した。
玉置氏は奈良県出身。公募区長の選考では、浪速区内の空き地活用策や自衛団を使った治安回復策などを提案したという。「(投稿が)大きな問題になるかもしれないが、辞退する考えはない」と話している。(yahoo news 6月23日)
どうも困った人たちを選んだものである。
「類は友を呼ぶ」という古諺もあるから、類似した事件がこれから続いても私は驚かないし、大阪の有権者も驚かないだろう。
ただ、市長はいささか憂鬱になっているのではないかと思う。
維新の会は次の総選挙で国政進出をめざしている。
週刊誌の予測では数十の議席を占めることになる勢いである。
あるいは予測の通りなのかもしれない。
だが、問題はこの数十人の議員たちがぞろぞろと国会議事堂に出勤したあと、誰がが彼らをたばねるか、ということである。
市長は「国政には出馬しない」と繰り返し表明している。
でも、この発言を額面通りに信用する人はほとんどいない。
必要と判断すれば、「大阪都構想を実現するためには国政改革が不可欠である」というロジックで「まず国政、それから大阪」と言い始めて国政に出馬するだろう。
「必要」という判断を下す可能性は高い。
というのは、仮に50人の国会議員を送り出した場合、その相当数は「公募区長」のレベルの人たちである蓋然性が高いからである。
政党である以上、その中から党首や幹事長や国対委員長を選び出さなければならない。連立与党に参加するという話になれば、大臣も出さなければならない。私たちがその名前もしらない「公募政治家」が国政維新の会の党首になり、大臣になる可能性がある。
この人たちに与野党政治家や官僚がすりより、メディアが群がり、財界人が「どうです飯でも」と誘いに来る。
そういう立場になっても、政策の適否のいちいちについて、国会審議内容のいちいちについて、大阪市長に連絡・相談・報告を怠らず、逐一大阪市長の指示を待つということはできない。
物理的にできないし、心理的にもできない。
必ずや「なぜ国政に参与しているわれわれが一介の地方自治体の首長に箸の上げ下ろしまで指図受けなくちゃいけなんだ」とぶつぶつ言うやつが出てくる。
必ず出てくる。
国政に参加して、半年もすれば、連立与党のボスたちと大物気分で懇談などしているうちに、市長に内緒であれこれの密約をなして、事後報告で「いや、市長にご相談せず、申し訳ありませんでした。市長もお忙しそうなので、ついこちらで勝手に・・・」で済ませてしまう議員たちも出てくるであろう。
いや、連立与党の連中は必ず言いますよ。
「あなた、もう立派な代議士なんだから、これくらいのことは市長に相談せず、自己裁量でお決めになってよろしいんじゃないですか。それができなきゃ、ただのロボットじゃないですか・・・それとも市長の逆鱗に触れるのがご心配で?ほうほう。それならどうです、いっそ『うち』に来ちゃ。次の選挙では必ず公認しますよ」とか。
それくらいのことなら自民党・民主党の食えない政治家たちなら絶対にやる。
その事態が予測できない橋下さんではない。
だから、たぶん国政に出馬することになると私は思っている。
自分が党首で、連立政権の大臣になって永田町でにらみをきかせていなければ、次の選挙までに市長のコントロールが効かなくなる議員が出てくることが予測できるからである。
だから国政に出る。
でも、市長が国政に出ると、大阪市長選が行われる。
当然平松前市長はリベンジをめざして出馬する(と思う。ようしらんけど)
かなり有力な対立候補を探し出さないと平松さんに勝つのはむずかしい。
さきの市長選で平松さんに入れた人がこの10ヶ月の市政の成果を見て、維新の会支持者に転じた可能性は低いが、橋下市長に投票した有権者の相当数は自分の投票行動を悔いているからである。
だが、もし平松さんが市長に返り咲いたらと、職員基本条例とか教育基本条例とか大阪都構想とかはほとんどぜんぶ「白紙」に戻されてしまう。
そうされては、これまでの努力が水の泡である。
だから、橋下さんはそう簡単には大阪市長を辞めることができない。
でも、大阪市長のままでは遠からず国政がコントロールできなくなる。
それくらいのことがわからない人ではない。
国政には出たいが、大阪からは出られない。
だから、総選挙が今すぐ実施されたら「困る」のである。
とりあえず「党首を託せるだけの実力があり、かつ大阪からリモートコントロールできる衆院選候補者」か「平松さんに勝てそうな市長選候補者」をみつけ出すまでは身動きができない。
はたして、そのどちらかが解散総選挙までにみつかるのか。
時間との競争である。
私はそういう観点から、興味深く推移を見ているのだが、上記のふたつのニュースを見ると、「党首」も「市長」も探し出すのは、なかなかむずかしそうな気がするのだが、どうなのであろう。
(2012-08-12 11:32)