結婚と合気道

2010-03-28 dimanche

多田塾甲南合気会の高取秀夫くんと金子真弓さんの結婚式に須磨離宮まで出かける。
ご招待の栄を賜ったのは井上健策さん、谷口武史さん、東沢圭剛くんと私。
男子ばかり。
ひごろ高取くんにしても、うちの女性陣にはずいぶんお世話になっているのであるが、こういう席に新郎側友人として女性を呼ぶ場合は人選に際してかなりデリケートな問題が発生するので自制されたのであろう。
賢明なことである。
チャペルで結婚式。
高取くん、すっかり緊張している。緊張しすぎたためか、事前の牧師さんによるレクチャーを聞き流していたせいか、「ちょっと、それは・・・」的ミスが何度か挙式中に散見されたが、新婦は堂々として、新郎のうろたえぶりを優しく見守り、胆力の違いをお示しになった。
披露宴もまたたいへん気持ちのこもった、手作り感のあるもので、列席した人たちにこの二人がいかに愛されているのかが知られるのであった。
思えば、08年の「煤払い」の打ち上げ宴会の席で、高取くんからかれのラブライフについて縷々泣き言を聞いたあとに、私が酔余の勢いで「金子さんにすぐにプロポーズしなさい。して、断られたら諦めなさい。しなかったら、破門」と厳命したことが今日の華燭の典に結実したのかと思うと、うたた感慨に堪えないのである。
スピーチを依頼されたので、「合気道家は入れ歯が合う」という話をする。
これは多田先生に本部での研修会のときに伺ったお話である。前にブログでも書いたことがある。
合気道家は義歯が「一発で合う」。
合わない人は何度作り直しても合わない。
それは別に口蓋の解剖学的形状の問題ではない。
武人というのは本質的に「ブリコルール」なので、「ありもので間に合わせる」ことを本務とする。
常在戦場のマインドとは、「ありもの」を使い回して、機に臨んで変に応じることである。
だから武人は「口に合う入れ歯はどこに行けば手にはいるか」よりも、「入れ歯に合うように口蓋を柔軟に機能させることはできないか」を先に考える。
この武人的マインドには高い汎用性があると私は考えている。
配偶者というのは「入れ歯」のようなものである。
それは「私」という自然に闖入してくる「異物」である。
本質的に「合わない」のである。
このときに「合う配偶者を求める」ことよりも、「配偶者に合わせる」ことにリソースを優先的に備給できるのが武人である。
すぐれた武人には愛妻家(というより恐妻家)が多いのは、その消息を伝えていると私は考えている。
さらに合気道修業に邁進されたい。
ピース。
美味しいご飯とお酒をいただき、お二人の気持ちのこもったスピーチを聴いて、心が暖かくなる。
お二人のご多幸を祈ります。
飲み足りないので、春宵を四人でふらふらと月見山まで歩き、三宮に出る。
三宮で飲んでいるという谷尾さん、岩本くんと合流して、Re-set で二次会。
それから11時まで熱く合気道について語る。
多田塾甲南合気会も会員70名という大組織になってきて、このままでは遠からず100名を超える。
そうなると、さまざまな「組織問題」というものが発生してくる。
来年、道場が建つと、その管理にともなうリアルな実務も発生する。
それをどうマネージするか。
これを「頭の痛い問題」と考える人もいるであろうが、私はこういう問題に取り組むことも「道場で稽古する」ということの重要な一部だと思っている。
だから、組織がややこしいありようになるのはむしろ「歓迎すべき事態」である。というのは、「組織をマネージし、集団的パフォーマンスを向上させる能力」こそは武道が涵養しようとしている「武人」的能力の本質だからである。
武道修業は単に個人の身体能力を高めることを目的とするのではない。
高い個人的能力に基づいて、「万有共生」のための、風通しの良い、のびやかな組織体を形成することが武道修業のたいせつな実践的目的であると私は思っている。
資本主義市場経済と消費文化の中で解体した中間共同体の再構築こそが私たちの喫緊の市民的課題であり、多田塾甲南合気会はそのための拠点の一つである。
それがその語の厳密な意味における共同体であるためには、「多様性と秩序」が同時に達成されなければならない。
多様性と秩序は矛盾するわけではない。
多様でなければ、システムは生成的なものにならないが、秩序が保たれなければ多様なもののうち「弱い個体」は適切に保護されない。
自由で開放的でありながら、隅々まで配慮と支援のネットワークが行き届いた共同体とはどういうものか。そもそもそのような共同体は現代日本に存立しうるのか。
それを多田塾甲南合気会の組織的実践を通じて検証してゆくことがこれからの私たちの武道的課題なのである。

おまけ
東沢くんがいろいろ撮影してくれました。
You Tubeの動画では、高取くんのサックスと真弓さんのドラムのデュエットが泣けます。
挙式での「高取君先走り」には大笑い。あたりを圧するほどの大声で笑っているのは私です。
写真いろいろ(facebookのアルバムにて公開
http://www.facebook.com/album.php?aid=2057300&id=1413764072&l=f01eef3ca1
動画いろいろ(youtubeにて公開)
http://www.youtube.com/watch?v=wb2cePcjdmE&feature=PlayList&p=3E1D58B6DD83EDC6&index=0&playnext=10
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