日曜はひさしぶりのお休み。
朝から『坂の上の雲』についてのエッセイを書く。
NHKで来月からドラマが始まるということで、『坂の上の雲』関連寄稿依頼がこのところいくつかのメディアからあった。
関川夏央さんの『「坂の上の雲」と日本人』の文庫版解説と、この洋泉社のムックの原稿だけ引き受けた(前者は当然だが、後者はいちばん締め切りが遅かったから)。
そろそろ締め切りというところで書き始めようとしたら、3枚だと思っていた寄稿枚数が30枚だった。
30枚といえば、たいそうな量である。ちょっとした卒論である。
あわててメールして、枚数を減らしてもらう。
とりあえず書けるだけは書きますとお約束する。
目方で量り売りする原稿というのも問題だが。
土曜に『日本の論点』の締め切りがあったので、『坂の上の雲』について書き出したのは、日曜の朝から。
超特急で10枚ほど書く。
昼から光安さんのところの予約にむりやりねじこんでもらって髪を切る。
夕方から結婚式だったのである。
白井宏明くんと吉川青子さんの結婚式が、御影の蘇州園であった。
吉川さんは私のゼミ生で、修士まで行ったので、つごう4年間のおつきあいになる。
当代にはめずらしい古典的「文学少女」である。
白井くんは神戸大学の工学部の院生だったときに大学院の私のゼミの聴講生に来ていた「男子組」のひとりである。
これまた当代には珍しく素直で笑顔のキュートな青年である。
私が教壇から語る変痴奇論を聴きながら、どうやって愛を育むというような芸当が可能なのか、私には見当も付かないが、愛があればそういうことも可能なのであろう。これは同語反復だな。
ゼミ仲間同士の結婚なので、ゼミ生たちがぞろぞろやってくる。
渡邊仁さんは「ゼミ長老」だから当然おいでになる(乾杯の音頭も)。
かんきちくんアオキくんスナダくんサモトさんは何年間か机を並べた「ほぼ同期の桜」である。
私は新郎新婦両方の先生に当たるので、「ただひとりの主賓」である。
主賓が新郎新婦とも同一人物という話はあまり聞かないが、先方が「そうしたい」というのなら、私の方に「どっちか一つじゃなきゃ、やだ」というような筋のものでもないので、いつものように頭も尻尾もないようなとりとめのない祝辞を申し上げる。
何はともあれ、私の家から歩いて五分のところで式を挙げ、披露宴をするという気遣いに感心する。
漏れ聞くところによると、蘇州園なら「当日になってウチダが結婚式のあることを忘れてだらだらしていても叩き起こせば間に合う距離」という条件で選ばれたそうである。
ゆきとどいた配慮である。
この気遣いがあれば、きっと幸福な結婚生活が送られることであろう。
私の話があまりに支離滅裂なので、渡邊さんに「ちゃんとした大人がする祝辞」をしてもらって、とりあえず恰好をつける。
新郎新婦のお人柄を映し出して(というのはほんとうである)、たいへんに穏やかでかつ愉快な結婚式であった。
ご多幸を祈る。
--------
(2009-10-13 08:59)