ポリティカルな日々

2009-03-14 samedi

極楽スキーではウエノ、ワルモノというふたりの筋金入りマルクシストと同席することになるので、酒席の話題が政治にかかわることが多い。
とくに私はいまワルモノ先生と共著で「マルクスを読もう」という本を書いているところなので、「マルクス主義の今日的意義」や「“左翼的なもの” の消滅がもたらす政治的構図の変化」といった論件について興味深い意見交換が行われた。
御影に帰ってきたら、こんどは民主党の国会議員のみなさんと会食することになった。
お招きくださったのは京都選出の参院議員の松井孝治さん。
同席したのは兵庫選出の衆院議員の松本剛明さん、静岡選出の衆院議員の細野豪志さん、徳島選出の衆院議員の仙谷由人さん。
どなたもたいへんフレンドリーな方がたである。
どうして私が民主党の国会議員のみなさんとお会いせねばならぬのか「意味がわからん」と思っている人も多いことであろう。
私もよくわからない。
よくわからないが、最初は松井さんに民主党の研究会での講演を頼まれたので、「講演はもうしないんです。ごめんなさい」とお断りしたところ、「じゃあ、一緒にご飯でも」ということになった。
お忙しい議員さんたちがわざわざ東京や選挙区から三宮においでになるというので、私もスキー焼けの顔のまま、よろよろと雨の街にまろび出たのである。
先方が私に何の用があるのかは先方の事情であって、私のあずかり知らぬところであるが、私はご存じのように「異業種の人」の話を聴くのが大好きである。
これはほとんど「趣味」の欄に書いてもいいくらい好きなのである。
世の中には、異業種の人にまったく興味がない人がいる(そちらの方が多いであろう)。
身内で集まって、身内だけに通じる符丁で話すのが大好きという人が多いが、私はそういうのにはすぐに飽きてしまう。
それよりは「よく知らない仕事に随伴するところの、よく知らないヨロコビやカナシミ」について、その業界の人の話をうかがうほうが面白い。
「世の中の成り立ちについて、どのようなフシギな人物がこの世の中を構成しているのか、それを知りたい」という欲望が私はとくに強いようである。
ともかくそういうわけで私は鴻華園で春巻きを食べ、Re-setでジャック・ダニエルズなどを痛飲しつつ、民主党の政権交代の可能性について、総選挙はいつあるのか、「麻生おろし」のあとの選挙管理内閣首班はだれか、小沢一郎は代表の座を保てるのか、岡田克也は使い物になるのか、などなど生々しい業界情報を堪能することができたのである。
仙谷由人議員はこの4人の中では最年長で、民主党左派の重鎮であるが、やはり長く政界を泳いできている人のお話は面白い。
私はex義父が自民党の代議士で、のちに県知事をしていた人物であるので、「政治家という種族」の体感は身近に知っている。
だいたいどなたも「手触り」が暖かい。
そして、自説に固執しない。
人から聞いた話をすぐに自家薬籠中のものとして、自分の栄養にしてしまう。
そういうオープンハーテッドな人が政治家には向いている。
ネゴシエーションというのが政治家の本務なのであるから、それでよろしいのである。
昨日仙谷さんから聴いた話でいちばん面白かったのは、「政治家の器」についての質問をしたときである。
政党を問わず、いまの政界で「器の大きい人」といったら誰でしょう?と私がお訊ねすると、仙谷さんは20秒くらい「うううううむ」と腕組みして下を向いてしまったのである。
そこまで考えても、さっぱり思い浮かばないというところが切なくもリアルなのでありました。
「意外にいいやつ」というカテゴリーで山崎拓と森喜朗の名前が挙がった。
「頼む」というと、頼みの内容にかかわらず(野党議員からの頼みでも)「ああ、いいよ」と即答できるというのが二人の共通点らしい。
なるほど。
国会議員のみなさんも、国政繁忙のおりにウチダにご飯なんかおごってくれて、ありがとうございました。
鴻華園の春巻き、ほんとに美味しいですね。

すみません「仙谷」議員の名前を「仙石」と表記しておりました。「せんごく」と ATOK に入れたら「ぽん」と出てきたので、そのまま変換してしまいました。仙谷さんごめんなさい!
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