シンクロニシティと予告編と業務連絡

2008-06-20 vendredi

驚いたことに『マンガ脳』という本が、ほんとうにあって、これが7月4日発売予定。
アスペクトという名の小さな出版社から出るのだが、その担当編集者がブログを見て、びっくりして本を送ってくださった。
世の中には同じようなことを考えている人が何人かいるものである。
書いたのは米山公啓さんという神経内科のドクター。
作家でもあり、なんと年間10冊、これまでに180冊本を書いているそうである。
すごいね。
著書に『右脳がいきいき蘇る本+CD』、『脳が若返る30の方法』、『脳がみるみる甦る53の実践』など。
タイトルから察するに、「脳がぐいぐい甦る」系のおはなしの好きな方のようである。
なるほど。そうですか。
まだ読んでないので、読んだら、感想をご報告します(しないかも知れませんけど)。

このところずっと橋本治さんとの対談のゲラを直している。
橋本文学の秘密を私が「徹子」となってさくさくと解明しようではないかというたいへん教化的な趣向のものである。
山の上ホテルで橋本さんと時間を忘れてお話しをしたのは、もう3年ほど前のことで、内容をすっかり忘れていたが、ひさしぶりに読み返してみたら、たいへん面白かった。
秋までには出ると思うので、「橋本治の文学と批評」について、その本質を知りたいと思う方はぜひお読みください。
「ほうほう」とか「あははは」とかいう合いの手仕事は私の得意とするところなのであるが、実際に私はほとんど笑っているだけで、「共著者」を名乗るのが申し訳ないような本である。
ちょっと予告編で一部お見せしますね。

内田 橋本文学のキーワードって、やっぱりそこですよね。音楽性というか、音ですね。
橋本 うーん、音が聞こえないのと、絵が見えないのはダメなんです。
内田 注文多いですね(笑)。音読するとわかるけど、橋本さんの文章って、音の選択がいいですね。だから、朗読しやすい。
橋本『窯変源氏物語』って書きながら朗読してました。あまりにもかっこいいから(笑)。
内田 そうか、やっぱり! さっき『源氏物語』の漢字がきれいだとおっしゃったぐらいだから、字面のグラフィックのきれいな印象もあるし、あとは「……」とか空白とかのビジュアルも駆使されて。
橋本 やること全部やってるし。
内田 音があって絵があって。小説を読むときには五感を動員しないとダメだよ、と。
橋本 だって日本の文芸評論家は文章の美しさは問題にしてくれないんですもん。
内田 ほんとにそうですね。音って大事ですよね。でも、この作家は音の使い方が巧みであるっていう批評、まず見ることないですよね。あと、本を開いたときのヴィジュアルな印象がきれいだとか。タイポグラフィとか、余白のかたちとか、紙質とか、このへんにすごく画数の多い漢字があって、こっちが白っぽくて、そのコントラストがいいとか。そういう考え方があってもいいと思うんですけどね。
橋本 あるんです。『窯変源氏物語』は漢和辞典を引きっぱなしですよ。
内田 かっこいい漢字を探して?
橋本 うん。『胡蝶』の巻で六条院で桜の全盛期みたいなのがあったから、桜に関する表現は、ほかにストックはありませんというぐらい全部ここで使い果たしちゃってもいいやと思って、そのときにぶち込んだんですよ。
内田 へえー……。
橋本 そしたら『藤裏葉』の巻になって、やっぱり花のシーンが出てきちゃって。ところが、それがお寺の花見だった。「ああ、しめた。仏教関係の用語を使えばいい。それで花を書こう」と思いました。「天蓋から垂れている、これをなんていうんだ?」とかって辞書を引きながら。と、「金偏で何かあったはずだ!」と思ってザアーッと見ていったりとか。
内田 小説を書くときに漢和辞典を引いて「いい字を探す」という人は橋本さんくらいですよ。

というような感じの対談である。
面白そうでしょ?
それから、「学内向けの業務連絡」
フランス語語学研修の参加者が定員に不足して1名追加募集をしています。
8月21日から9月12日まで、ブザンソンのフランシュ=コンテ大学の鷹揚言語センターで2週間50時間の研修プラスパリ自由研修1週間です。(えへへ、もちろん「応用言語センター」の間違いです。どもすみません。でもいいですね「鷹揚言語センター」。ことばの使い方間違えても「ノンノン、パ・ド・プロブレム」でにっこり許してくれそうで)
私が全行程フルアテンダンスで、添乗員、ポーター、通訳、ボディガード、ガイドなどを勤めさせていただきます。
ブザンソンは中世のままの城砦が残るシックで美しい街です。名物料理はジャガイモとソーセージとチーズのグラタン(高脂質ごはんだけど、美味しいの)。初秋のフランスでほっこりしたい神戸女学院の学生・院生・聴講生諸君、どなたも歓迎です。
受付は本学国際交流センターまで!
お早めに。
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