ぜろぜろななはころしのばんごう

2008-02-16 samedi

14日は朝カルの名越先生との対談。
川上牧師、ウッキー&ヒロスエ師弟、タムラ母子、かんちきくん、トガワさんなどいろいろな人がおいでになった。
日が日なので、いろいろな方からたくさんスイーツをいただく。みなさんどうもありがとうございます。
これからしばらく「おめざ」のお菓子に困らない。
自分で言うのもなんだが、たいへん面白い対談であった。
どこかで本にしたらと思うのだが、話の半分くらいは公開不可ネタであった(府知事の精神鑑定とか)。
そのあと朝カルの森本さん小西さんに隣のビルから遊びに来た江さんや大迫力とかいておおさこちからと読む大迫くんらもまじえてプチ宴会。
Everything is all right が「かめへん」に変換される江さん訳の「岸和田弁で語るポール・スミス」に全員抱腹絶倒。
あまりにおかしすぎて北新地から歩いて阪急梅田まで笑い続け。

翌 15 日は13時から17時半まで会議が4つ。
『街場の現代思想』のゲラを放置していたら文春のヤマちゃんが忍耐の限界に到達したらしく、「もう見なくていいです。そのままお返しください。そのまま出しちゃいますから」と震える声で電話してきたのであわててゲラを取り出す。
すると「2月1日必着」と書いてある。
なんと15日間も放置プレイをしていたのである。
まあ、怒るわな。ふつうは。
あわててゲラを会議中に直す。
別にたいして直すところもないので、「そのまま出しちゃって」も別によかったのであるが、せっかく2週間も延ばしたのであるから、何か書かなければ悪いので、「あとがき」を書く。

家に帰ってカレーを作る。
ときどき発作的にカレーが食べたくなる。
今回は「ハウス・ザ・カリー」辛口をベースに、鶏肉、パプリカ、タマネギ、ベーコン、舞茸、しめじを投入。
タマネギを茶色になるまでしつこく炒めたので、わりと甘めのカレーになる。
炊きたてのコシヒカリにこれをまぶして食す。
まことに美味である。
幸福な気分になったので、007シリーズ全巻踏破の旅を再開する。
すでにこの旅は先年実行したのであるが、その後「007シリーズ全20巻ボックス・スチール製アタッシュケース入り」というものが発売されたので矢も楯もたまらず amazon で購入してしまったのである。
ところで「attaché case」はいつから「アタッシュケース」から「アタシェケース」に発音変更になったのであろう。
「アタッシュケース」という語が巷間流布するようになったのはまさしく007の第二弾『ロシアより愛を込めて』で Q がボンドに貸与した仕掛け満載の皮のケースが中坊たちの耳目を集めてからである。
中坊は「皮」が好きである。
われわれの世代においてインパクトのあった「皮もの」と言えばまず『ウェストサイド物語』のシャーク団の諸君が着用の皮のリストバンド。そして『大脱走』でスティーヴ・マックイーンが着用していた皮のジャケット(これだって1960年代はきっちり「ボンバー・ジャケット」と発音されていたのであるが、いつのまにか発音が正しくなってしまった。正しく発音するのはむろん結構なのであるが、その場合、それ以前違う発音で指称されていた物品はそれとはやはり「別物」なのである)。
1977年に私が平川くんと創立した株式会社アーバン・トランスレーションの制式バッグは「アタッシュ・ケース」であり、私たちはそれを携行してジェームス・ボンド気分でいた(これも「ジェームズ・ボンド」ではなく「ジェームス・ボンド」だったのである。おそらくは『少年ジェット』における悪役の名からの連想だったのであろうが、60年代の中坊たちはきっちり「ジェームス・ボンド」と発音していたのである。歴史を改竄してはならぬ)。
ともあれ『ドクター・ノオ』から見る(もちろんこれも正しくは『007は殺しの番号』なのであり、むろんのこと007は「ダブローセブン」ではなく、きっちり「ぜろぜろなな」と海軍式に呼ばねばならぬ)。
初期のジェームス・ボンドはワルサーPPKサイレンサー付きでばんばん人を殺してしまう(何しろ大英帝国発行「殺しのライセンス」所持者であるだから立場が強い)。
しかし、今見るとデント教授を殺すのはいくらなんでもやりすぎであろう(生かしておいて尋問しなければならないことが山のようにあるのに)。
それも丸腰の相手を一発撃って、「うぐぐ」と苦悶させて、さらにダメ押しの二発目で絶命させるのである。
ジェームス・ボンドは第一作の頃はけっこう残酷な人だったのである。
アーシュラ・アンドレス(しつこいようだが、これも断じて「ウルスラ・アンドレス」ではないよ)のハニー・ライダーは途中で水に入るときにわざわざ水着の上半分を脱いでしまうのであるが、これは論理的には納得の行かないところである。水着というのは水に入るときに着用するものであって、脱衣するものではない(もちろん観客的にはノープロブレムであるが)。
などなどたいへんに愉しい2008年007の旅がこれから二ヶ月ほど展開するのである。
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