麻雀アゲイン

2008-01-03 jeudi

お正月なので、るんちゃんと会う。
授賞式以来。
いつものように自由が丘の不二屋書店で待ち合わせをしてから、ハイアニス・ポートでお茶。
ここは1950-60年代のポップス「だけ」をかけ続けるという「こだわり」のお店である。
ご存知のようにHyannis Portはケネディ家の別荘があったマサチューセッツの避暑地である。
J・F・ケネディ大統領が在任中にも繰り返し訪れたために、当時のニュース映画では大統領がここでヨットに乗っている映像がよく流れたものである(J・F・ケネディ二世は奇しくもこの沖で飛行機事故死した)。
というわけで、ハイアニス・ポートはケネディ大統領の時代(つまり1960年から63年)のアメリカが「好き」という日本人のある世代にとってはわりと思い入れのある地名なのである。
ドアを開けるとリッキー・ネルソンのねっとりした声が聞こえる。
そういえば、私が幹事だったときに、自由が丘道場の納会をここでやったことがあった。もう20年前くらいのことである。
60年代ポップスを聴きながら、バドワイザーを飲んで、BLTサンドイッチを食べるというたいへんアーベインな納会だった。
るんちゃんとおたがいに近況報告をする。
年末に『婦人公論』の取材があったけれど、そのときにも私とるんちゃんの父子関係についてずいぶんあれこれと訊かれた。
18歳で親離れ子離れするのがどうすれば可能なのか、と世間の親御さんがたはいろいろ悩んでいるようである。
30代なかば過ぎまで子どもを手元に引き止める親たちが増えているかららしい。
たしかに、そんなに引っ張っては子様も成長のきっかけがつかめまい。
18歳でも家を出すには遅すぎたのではないかとさえ思っている。
私自身は16歳でランナウェイした。
その半年後には尾羽打ち枯らして家に戻ったのだけれど、それはもう「子ども」ではなく、「三杯目にはそっと出しの居候」というステイタスにおいてであった。
そして大学に入ったとたんに、入学手続きをするより先に家を飛び出して駒場寮にもぐりこんでしまった(そういうことができたのである。よい時代であった)。
でも、それくらいが「ふつう」の成熟の歴程ではなかろうか。
るんちゃんも家を出てはや7年。すっかり大人のおねいさんである。
高円寺の「素人の乱」は2年勤めたけれど、ここを大晦日をもって退職し、今年から新しいビジネスをご自身で始められるそうである。
要るなら出資するよ、と申し上げておく。
私は友人が起業して「お金出して」と頼まれたときはこれまですべて出資している。
うまくいったときもあるし、あまりうまくいかなかったときもある。
でも、どれもずいぶん愉快な思いをしたから、それでよいのである。
世間では「相談には乗るが、金は貸さない」というポリシーの方が多いが、私は「相談には乗らないが、金なら貸す」というポリシーである。
こんなことを書くと「じゃあ、貸して」と言ってくる人がいるであろうが、これは内田百閒先生の「禁客寺」と一般で、「とはいうもののお前ではなし」なのである。期待させてごめんね。
1時間ほどおしゃべりをしてから武蔵小山のAGAINにでかける(そういえばAGAINも私と平川君が出資した事業である)。
るんちゃんもひさしぶりに石川さんに挨拶したいからと同行する(るんちゃんは去年3月のAGAINの立ち上げのときにお手伝いをしたのである)。
兄ちゃんと平川君も来ているのでみなさまがたにお年始のご挨拶をする。
毎年この「温泉麻雀」面子でお正月をする。
今年はAGAINというたまり場があるので、さきほど録音したばかりの大瀧詠一師匠のラジオ放送を聴きながら、にぎやかに正月麻雀。
AGAINでは去年の暮れに大瀧師匠の録音があり、伊藤銀次さんにはライブ来ていただいているので、山下達郎さんが来てくれるとナイアガラ・トライアングルが完成する(今度お茶のみにきてくださいね、山下さん)。
石川君は大瀧さんに来店してもらったので、もういつ死んでも悔いはないと遠い目をしている。
ナイアガラーとしては当然の感懐であろう。
このときの大瀧さんと平川君と石川君と私の四人の座談会はラジオデイズからダウンロードできる。
12 月 28 日にダウンロード開始となったので、さっそく買い求めて、元日に新幹線の中でiPodで聴いた。
もう面白すぎて車内で笑いをこらえきれずにくすくすと噴き出してしまった。
ラジオデイズでは、去年、私と平川君がホストになってゲストに来てもらってお話しをするという連続企画で三本の収録をした。
最初が高橋源一郎さん、次が養老孟司先生、最後が大瀧詠一師匠である。
高橋さんと養老先生はお願いすればラジオには出てくれると思ったけれど、師匠は出てくれるかどうかかなり心配だったのだけれど、頼んでみたらご快諾くださった。
ラジオデイズに「大瀧さんオッケーだって」というメールを送ったとき、社内で「わお〜」と歓声が上がったそうである。
大瀧さんが去年ラジオに出たのはお正月恒例の山下達郎さんとの新春放談とこの座談会だけである。
アミーゴガレージでの大瀧さんの年頭のご挨拶の中で、このときの話をちょっとだけ書かれている。
というレア音源である。
三本ともどれもほんとにめちゃめちゃ面白いので、これはぜひ皆様にお聴きいただきたいと思う。
ラジオデイズにアクセスして、会員登録をすれば、すぐにダウンロードできる。
私の笑い声が飽きるほど聞けます。
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