『かもめ食堂』を見たら塩鮭が食べたくなった

2007-10-15 lundi

土曜はゼミの96年卒イシモリくんの結婚パーティがある。
この代は、オガワくんとカナ姫といっしょに語学研修のおまけのイタリア旅行でベネチアに行き、ほかの諸君とはみんなでぞろぞろとランカウイで泳いでクアラルンプールでハイティーをしたので、全員の顔と名前を私がちゃんと覚えている稀有の卒業生世代である。
やはりゼミ旅行はたいせつである(卒業後10年しても私に名前と顔を覚えておいてほしかったら、「とんでもないところ」にゼミ旅行に行くのが効果的である)。
イシモリくんは親孝行の島原娘であるが、このたび良縁を得て、長崎に嫁がれたのである。
去年の三月に同期のバッシーが神戸で結婚式を挙げて、そのときにイシモリくんとはひさしぶりにお会いした。それ以来である。
バッシーのパーティではハチスくんとイシモリくんの二人にしか会えなかったが、今回はゼミ生5人(バッシー、ハチスくん、アイコさん、アキラさん、リナちゃん)にまとめて会えた。
その場にいない同期生たちのことが話題になる。
私はそれぞれと個別的に連絡をとっているので、けっこう事情に通じている。
知っていることを教えてあげる。
7月にはオガワくんの結婚式に岡山まで行ったし、8月は引越しのどたばたのさ中にイタリアのブタさんが生ハムをもって遊びに来た。
最近ちょっと音信が途絶えている人たちもいるが、みんな元気で暮らしているだろうか。
新郎が司会をするという、たいへんフレンドリーで暖かいパーティであった。
新郎に「ふつつかな娘ですが、末永くよろしく」とお願いする。
どうも、そういう気分になってしまうのが不思議である。
一同河岸を換えて、またもResetへ。
当然の流れで、どのようにして結婚生活をハッピーにすごすかについて私が講義を行う。未婚のテラダくんにはどのようにして男性を籠絡するのかについて実践的なテクニックをいくつかご教示する。
一同「そんなこととはつゆ知りませんでした」と驚く。
そうだろうとも。
帰りしなに、今年の卒業生のフクダ(チナツじゃないよトモカだよ)が来たので、また座りなおして、人生いかに生きるべきかについて長説教をする。
さすがに最後のころは酔眼朦朧として、何を話しているのか自分でもよくわからない。
日曜は当然ながら二日酔いで目覚める。
今日は明石で講演をしなければならない。
二日酔いのときは「朝ごはん(できればご飯、納豆、味噌汁、漬物など和食めにうのもの)をしっかり食べて、ぬるめのお風呂にだらだら浸かり、頭を洗って、さっぱりしてからパジャマを着替えて二度寝する」というのがいちばん回復が早い。
今回もその手で11時過ぎには八分目ほど人間に復する。

半睡状態で明石へ。
今回は明石市生涯学習センターのお招きで、現代社会と若者たちについて論じるのである。
何を話すかだいたい決めていったのであるが、やはりぜんぜんそういう話にはならず、「そういえば、おとといのことですが・・・」というマクラを振ったら、勢いでそのまま「おとといの話」で45分ほどひっぱってしまった。
志ん生というよりは牧伸二である。
でも、個人的な趣味を言わせてもらえば、「そういえば、さきほどずいぶんと奇妙なものを見かけまして・・・あれはいったいなんなんでしょうか」というような話をだらだらしているときがいちばん楽しい。

講演を終えて、神戸から来てくれた渡邉仁さんといっしょにJRで帰る。
多田塾合宿に行った諸君から新潟土産の「妻有そば」をもらったので、家でとろろ蕎麦を作って食べる。
めちゃ美味である。
玉垣製麺所の妻有そばは日本一美味い。
あまり食べ過ぎて苦しくて死にそうになる。
しばらく「牛」になってから、アマゾンから届いた『かもめ食堂』を見る。
タムラくんの卒論が『かもめ食堂』の構造分析だというので、見たのである。
たいへん雰囲気のよい映画であったが、これを構造分析しろといわれたら私はちょっと困る。
「牛」になった直後であるにもかかわらず塩鮭が食べたくなったというところがさすが映画の手柄である。
タムラくんにはぜひがんばってほしいものである。

月曜は会議が二つ、授業が一つ、取材が二つ。
取材の一つは「子供とお金」。
もう一つは「スポーツ論」。
児童心理学者になったあとは、スポーツ評論家になる。
子供にうかつにお金を持たせると人間的成長が阻害されるが、まるで持たせないと人間的に成長できないという話のあとに、スポーツは人間性に反し、健康にもよくないが、その点がまことに人間的であるというどちらも似たような話をする。
「・・・は人間の本性に反する。その点が人間の本性にかなっているのである」という話型は汎用性が高い
人間というのは自分の本性に反することを熱心に行うという点において際立って人間的なのである(そういうことをサルはしない)。
自分で言ってみてから、ほんとうにそんな気がしてきた。
この手でしばらく行けそうである。
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